放送現場の疑問・視聴者の疑問

「西域」の読み方は?

中国の西方の地域「西域」が歴史・紀行番組などでよく登場しますが、その読みは[サイイキ][セイイキ]のどちらでしょうか。

歴史的な用語としては、[サイイキ]と読んでいます。

解説

「西域」は、中国人が自分たちの西方の地域や諸国を総称したことばです。狭義には現在の中国西部の新彊<きょう>・ウイグル自治区方面をさします。読み方には(1)[サイイキ](2)[セイイキ]の両方あり、辞書類の扱いをみても(1)を採るもの(2)を採るもの、両方を採るものとマチマチです。しかし、歴史・文化部門の用語としては、古くから[サイイキ]と読まれ、東洋史などの専門家の慣用的な読みは[サイイキ]です。また、同音語の「聖域」[セイイキ]との混同が避けられるということからも、「西域」を歴史的な用語として放送で使う場合には、[サイイキ]と読んでいます。ただし、現在の新彊<きょう>・ウイグル自治区方面を主にさして言う場合は、[セイイキ]と読んでもよいことにしています。

同じ「西~」ということばで、読み方をよく迷う用語に「西方」と「西国」があります。このうち、「西方」は、「西の方角」を意味する一般的な用語の場合は[セイホー]、「西方浄土」など仏教用語の場合は[サイホー]と読みます。また、「西国」の伝統的な読みは[サイコク]ですが、今では[サイコ゚ク]と読まれることが多くなっています。このため、「平家物語」「ひらかな盛衰記」「青砥稿花紅彩画<あおとぞうしはなのにしきえ>」(白浪五人男)など古典文学・古典芸能の場合は[サイコク]と読み、そのほかの場合は[サイコク][サイコ゚ク]両方の読みをしています。

(『ことばのハンドブック』P72、P73、P99 『日本語発音アクセント辞典』P331、P336、P469、P475参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)