放送現場の疑問・視聴者の疑問

「VTR」の使い方は?

テレビのニュースや番組で、アナウンサーやキャスターがビデオテープの映像を紹介するときに「VTRをご覧いただきましょう」「現在ご覧いただいている映像は、午前(午後)○時○分ごろに撮影したVTRです」という言い方をするときがあります。この場合の「VTR」の使い方は“ちょっと違うのでは”といつも気になるのですが…。

そのような場合の「VTR…」という言い方は既に慣用的に使われている面もあり一概に間違いだと決めつけることはできませんが、抵抗感を持つ人もいますので、できるだけほかの言い方をしたほうがよいでしょう。

解説

「VTR」を辞書で調べると

  • (1)「videotape recorder」「ビデオテープ・レコーダー」
  • (2)「videotape recording」の略語型として示されています。

つまり、「画像・映像と音声をビデオテープ(磁気テープ)に記録し、再生する装置」のほかに「ビデオテープで録画すること、または録画したもの」という意味もあります。従って、「VTRをご覧いただく」という例文は、(2)の意味でも慣用的に使われており誤りだとは言えません。

しかし、(1)の意味で字義どおりに厳密に解釈すると、「VTRという装置を、(視聴者に)ご覧いただく」ということになり、いきなり耳で聞いただけでは、ご指摘のように抵抗感・違和感を持たれるかと思います。このような例文の場合は、「○○を取材しました。(○○を取材した映像があります。それを)ご覧いただきましょう」「現在ご覧いただいているのは、午前(午後)○時○分ごろに取材・撮影した映像です」などと言ったほうが的確で、抵抗感・違和感はないでしょう。また、このほかによく使われている「これまでの動き(経緯)をVTRにまとめました」という言い方も、「VTR」抜きで単に「これまでの動き(経緯)をまとめました。(ご覧ください)」と言えばよいでしょう。

(『ことばのハンドブック』P156参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)