放送現場の疑問・視聴者の疑問

「鏡開き」と「鏡抜き」どの表現でもよい?

新年の祝賀パーティーやスポーツ大会の祝勝会で、酒だるを割る様子がテレビや新聞で伝えられていましたが、その際「鏡開き」「鏡抜き」など様々な表現が使われていました。どの表現でもよいのでしょうか。それとも正しい言い方があるのでしょうか。

祝い事などで「酒だるのふたを開ける」ことは、「鏡を抜く」というのが本来の言い方です。「鏡開き」は、もともとは「鏡もちを下げる」正月行事を指します。「酒だる」については、放送ではできるだけ「鏡開き」を使わないで、具体的に「四斗(しと)だるを開ける」などと言いかえるようにしています。

解説

「鏡」には、顔や姿をうつす「かがみ」のほかに、円くて平たい形が似ていることから「正月や祭りの鏡もち」や「酒だるのふた」の意味もあります。

このため、お祝いに「酒だるのふた」を木づちなどで割って開ける動作(ふたを抜くこと)を、「鏡を抜く」「鏡抜き」と言うようになりました。しかし、この言い方も今では若い人たちを中心になじみがうすくなっているうえ、「抜く」は語感が悪いと指摘する人もいます。「鏡開き」は本来は「鏡もちを下げて食べ祝う」正月行事を指します。「鏡割り」という言い方もありますが、「割る」がいわゆる「忌みことば」であるために、婚礼などのおめでたい席を中心に「鏡開き」と言うことが多くなったようです。辞書でも、「鏡開き」を「鏡抜き」と同じ意味としているものも増えています。

それでも、この言い方に抵抗感や違和感を持つ人は多く、放送で「酒だるのふたを開けること」を「鏡開き」と表現すると「本来の使い方ではない」という内容の意見や苦情が視聴者から来ます。

放送では、「酒だる」と「鏡もち」の混同を避け分かりやすくするためにも、できるだけ「鏡開き」を使わないで、具体的に「四斗だるを開ける」などと言いかえるようにしています。このほか、「酒だるを開ける」「酒だるを開けて、(○○氏の当選を・○○関の優勝を)祝いました」という言い方もできるでしょう。

(ことばのハンドブックP36参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)