放送現場の疑問・視聴者の疑問

「雨模様になる」は正しい?

先日の朝の番組で、北日本を中心に雨が降っている時の様子をアナウンサーが「全国的に雨もようになっています」と話していました。「雨もよう」は、「雨が降っている状態」ではなく、「これから雨が降りそうな状態」を指して言うのではないでしょうか。

ご指摘のとおり、「雨もよう」は「雨になりそうな状態」の時に使うのが本来の用法です。しかし、今では本来の用法に加えて「すでに雨が降っている状態」の時にも使われています。

解説

「雨もよう」や「荒れもよう」の「もよう」は、「今にもそうなりそうな様子」をあらわす和語の「催い(もよい)」が変化したものです。このため、「~となりそうな状態」の時に用いるのが本来の用法ですが、今では雨が降っていたり天候が荒れていたりする状況を説明する場合にも、「~もよう(模様)」という表現がよく使われるようになりました。地域や時間帯によって、モザイク模様のように雨が降っていたり降らなかったり、天候が荒れていたりいなかったりする状態を「時間的」「空間的」にまとめて表現するには便利なことばで、辞書でも新しい用法を認めるものが出始めました。こうした動きを受けて、「雨もよう」「荒れもよう」という表現について、すでに小雨が降っていたり、天候がやや荒れていたりする場合にも放送で使ってよいことにしています。ただし、その場合は、雨や風の様子など具体的な記述を心がけるようにしています。また、意味があいまいで解釈が分かれる表現なので、天気予報では使いません。

(ことばのハンドブックP11参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)