放送現場の疑問・視聴者の疑問

「耳ざわりのいい音」は誤用では?

「耳障り」ということばが、「耳ざわりのいい音」などと肯定的に使われる例がありますが、本来否定的な意味をもつ用語ではないでしょうか。

そのとおりです。

解説

「耳ざわり」は「耳障り」と書くように、本来は聞いて不愉快に感じたり、うるさく思ったりする場合に使われることばです。「目障り」も同じです。しかし、最近では「歯触り」「舌触り」などの連想からか、「耳ざわりのいい音楽」「耳ざわりのいいことば」などと使われる例も増えています。記憶に新しいところでは、先の自民党総裁選で3候補が論陣をはっていたとき、これに対する意見の中に、「3人とも耳ざわりのいい政策を掲げているけれども・・・」などの表現がみられました。幾つかの国語辞典の中にも「耳触り」という見出し語が登場しているほか、「耳当たりのいい○○」という用例を収録している辞典もありますが、「耳ざわりのいい○○」のような使い方には、まだ抵抗を感じる人が多いようです。

ちなみに、「耳ざわりがいい」という言い方について、「おかしい」と答えた人が、1980年の有識者アンケートで89%、また世論調査では1989年が59%、1992年が47%となっており、「おかしい」と思う人がしだいに減ってきています。それでも半数近くの人が、この新しい言い方に抵抗感を持っていることは、放送のことばとしてまだ市民権を得ていないといえます。

(NHKことばのハンドブック P195参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)