本土復帰から50年,沖縄はどのような道を歩んできたのか

ーNHKの世論調査からみる沖縄の50年ー

公開:2023年1月30日

2022年5月15日、沖縄が本土復帰してから50年を迎えた。NHKは、本土復帰前の1970年から沖縄に関して継続的に世論調査を実施してきた。本稿は、1970年から2022年までNHKが行った世論調査の結果をもとに、沖縄の人々が本土復帰からこれまで、どのような思いを持ってきたのか。本土復帰からの50年間、沖縄はどんな道を歩んできたのかを振り返った。
復帰の2年前に、85%にのぼる人が歓迎した本土復帰だったが、本土復帰の翌年に行われた世論調査では、本土復帰を評価しない人が半数以上を占めた。その後も、復帰を評価しない人が多数を占める状況が続いたが、それは物価高によって苦しい生活が続いたことや、本土復帰によって撤去や縮小されることを期待していたアメリカ軍基地がほとんどそのまま残ることになったことなど、思い描いた姿とは違う本土復帰になったことなどがあった。
その後、政府による沖縄振興策や旅行者の増加などによって、経済が発展し、人々の生活が豊かになっていったことにともなって、本土復帰に対する評価が変わり、1980年代の後半以降、本土復帰を『よかった』と評価する人が8割程度を占める状況が続いている。
一方、復帰後も沖縄に残ったアメリカ軍基地に対しては、長年にわたって、否定的な意見が多数を占めた。基地の存在が既成事実化していったことに加え、同時多発テロ事件や、中国や北朝鮮の脅威など、日本を取り巻く安全保障環境の変化にともない、2000年代に入って、初めてアメリカ軍基地を肯定・容認する人が多数を占めるようになった。基地が存続し続ける現実を受け入れざるを得ない一方で、事件や事故、騒音問題など、基地をめぐる様々な問題に悩まされ、本音では、アメリカ軍基地が本土並みに少なくなって欲しいと願う沖縄の人々の変わらぬ思いもうかがい知ることができた。
経済的に発展し、観光リゾート地として、全国や海外からも大勢の人が訪れるようになった沖縄であるが、2022年の調査で、今後取り組むべき重要な課題として多くの人が挙げたのが「貧困や格差の解消」だった。全国に比べて所得が低いことなどが背景にあるが、特に子どもたちの貧困が問題となっていて、親とともに子どもたちの貧困に、どう向き合っていくかが新たな課題として浮かび上がっている。

世論調査部 中川和明

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