確率標本抽出による調査手法 WEBシフトの展望

~ESRA(ヨーロッパ調査研究学会)大会報告~

公開:2019年12月1日

ことし7月にクロアチアで開かれたESRA第8回大会では、調査研究に関する約220のセッションが開かれた。このうち、確率標本抽出の調査で、面接法などの伝統的な手法からWEBへのシフトを試みるヨーロッパ各国の最新事例を報告する。
まず、ONS(イギリス国家統計局)は、面接法からWEB&面接のミックスモードへ切り替えることを目標に、9年におよぶ実験調査の結果を発表した。ONSは、これを“Transformation(抜本的な変換)”と位置付け、単なる調査手法の変更にとどまらず、自記式のWEB調査でもデータの質を維持できるように、調査票や調査材料も一から見直した。その結果、これまでよりもやや高い回答率を得ることができた一方で、若年層や一部の地域などでは十分な効果が得られないなどの課題も見つかった。
また、GESIS(ドイツ社会科学研究機関)は、WEB&郵送のミックスモードが面接法の代替になりうるのかという問題意識から、両者を比較する実験調査を行った。その結果、回答率は大幅に向上し、サンプル構成や全体の回答結果にほとんど違いはみられなかった。
このほか、調査のベスト・プラクティスをめぐる議論では、多くの参加者が国や年齢、キャリアにかかわらず、最適なデータ収集の方法は何なのかといった共通の課題に取り組んでいる様子がうかがえた。ほかの参加者からのフィードバックを得ながら自分の研究をブラッシュアップさせるという雰囲気こそが、ESRAという場の特長であるように感じられた。

世論調査部 萩原潤治

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