放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米,ヒスパニック向け英語テレビ開局へ

アメリカの4大ネットワークABC傘下のABCニュースと全米最大のスペイン語テレビ局ウニビシオン(Univision)は5月7日,ヒスパニック系住民を対象とした英語によるニュースネットワークを立ち上げる計画を発表した。今年の夏からオンラインサービスを始め,2013年からテレビ放送を開始する。アメリカではすでに複数のスペイン語チャンネルがあるが,アメリカ生まれのヒスパニック系住民の割合が増え,スペイン語よりも英語での情報を望む人が増えているという。ネットワークの名称は未定。

ボリビア,国営デジタルテレビ立ち上げ

南米ボリビアのエボ・モラレス大統領は5月10日,国営のデジタルテレビチャンネル,ボリビアTV HDを発足させた。大統領は声明で,「関係当局と日本などとの協力によって我々のデジタルテレビ局を開局できることは喜びだ」と述べ,開局の目的はコミュニケーションの民主化と文化の多様性を促進することだと語った。モラレス大統領は同国のマスメディアに対する批判的な言動で知られ,そのメディア政策が論議を呼んでいる中での国営テレビ開局となった。

ブラジル,情報公開法施行

ブラジルでは,2011年11月に成立した情報公開法が5月10日に施行された。同法は,ブラジルの立法,行政,司法など国家レベルから市町村レベルに至る全ての公的機関の情報公開を義務づけ,その手順を規定している。同法では各機関に対し,市民からの情報開示請求を受けつけたり手続きの案内などを行う専門部局の設置を義務づけたりしているが,準備が間に合わないところが多く,混乱が起こるのではないかという懸念の声が上がっている。ブラジルの情報公開法施行は,同種の法律としては世界で90番目になるという。

米,プロパブリカのスタイガー編集長,年内で勇退

調査報道専門の非営利組織として2007年に創設され,2年連続ピュリツァー賞を受賞したプロパブリカのポール・スタイガー編集長(69)が今年一杯で勇退すると,5月14日付のニューヨーク・タイムズが報じた。スタイガー氏は1991年から15年にわたりウォールストリート・ジャーナル紙の編集局長を務めた後,多くのメディアで調査報道スタッフが減らされていく状況に危機感を持ち,サンドラー財団から1,000万ドルの援助を得てプロパブリカを立ち上げた。同氏は組織の活動が軌道に乗ったため一線を退くとしており,来年からは編集主幹のステファン・エンゲルバーグ氏が後を継ぐ。

米,ニュース博物館,
72人のジャーナリスト犠牲者を追加

ワシントンD.C.にあるニュースの博物館,ニュージアム(Newseum)は5月14日,取材活動中に命を落としたジャーナリスト72人の名前を,「ジャーナリスト・メモリアル(追悼の碑)」に追加した。ジャーナリストの保護を目的としたCPJ(ジャーナリスト保護委員会)の調べによると,2011年は少なくとも46人が命を落とし,さらに35人について取材活動中の死亡かどうかCPJが調査を進めている。国別ではパキスタンが7人と最も多く,リビアとイラクがそれぞれ5人などとなっている。今回の72人を含め,メモリアルには1837年からの2,156人のジャーナリストの名前が記されている。

米,公共ラジオNPR,収入減少で赤字の恐れ

ワシントン・ポスト紙は5月17日,2011年10月からの半期で公共ラジオNPRへの企業協賛金が大幅に減り,年間では赤字決算になる可能性が高いと報じた。昨年12月に就任したNPRのゲイリー・ネル会長は同紙のインタビューの中で,不況などの影響で企業からの支援が減っていることをあげ,「今年はこのあと,ロンドン五輪や米大統領選挙の報道で多額の出費が予想されるため,厳しい財政状況が続くだろう」と述べた。ネル会長は具体的な番組の中止などには触れなかったが,ポスト紙は,予算不足の影響でスタッフや番組の削減もあり得るとしている。