放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英インターネット接続TVのYouView,2011年開始へ

イギリスの公共放送BBCや商業テレビのITV,チャンネル4,Five,そして通信事業者のBTなどは共同で,インターネット接続TVサービスの YouView社を設立し,2011年前半にサービスを開始する予定であると9月16日に発表した。これは,これまで「プロジェクト・キャンバス」と呼ばれていたものが本格的に事業化されたもの。利用者は,デジタルテレビと専用チューナー,ブロードバンド回線を備えれば,無料で地上デジタルテレビ番組の見逃しサービスが利用でき,有料の映画などプレミアム・コンテンツも視聴できる。専用チューナーは来春に200ポンドで販売される予定。

英政府,ローカルテレビ強化の方針を発表

イギリスの放送を所管する文化メディアスポーツ省のジェレミー・ハント担当相は9月28日,ロイヤル・テレビジョン・ソサエティーにおける講演で,連立政権としてのローカルテレビ新興政策の方針を発表した。前政権はこの課題に受信許可料の一部を割り当てるとしていたが,現政権はこれを長期的な挑戦と位置づけ,ローカル企業の自主性を基盤に,1日1時間の放送の確保,所有規制の緩和や経費抑制のためのメディア連携の促進,都市圏を中心としたブロードバンドの利用,新たに始まるYouViewやモバイルTVなど新技術の積極的な活用,公共放送のBBCとローカルメディアとのパートナーシップの促進という方針を示した。

イタリアで3D放送始まる

10月1日,大手商業テレビMediaset が地上デジタルの有料オンデマンドで3D 映画の提供を開始し,イタリア初となる3D放送が本格的に始まった。続く10月3日には,衛星有料プラットフォームSky Italia が,米国と欧州の選抜ゴルフ対抗戦である「ライダーカップ」最終日の模様を3Dで生放送した。同放送の視聴には,3D対応テレビのほか,各プラットフォームに対応したHDチューナーや専用メガネが必要となる。約470万件の全契約者のうちの50%以上がHD 契約というSky Italiaは,2011年までにHDチャンネルを50チャンネルまで増やす計画であり,3D放送によりさらなる契約者獲得を目指している。

ギリシア,TV新規課税ECに違法審査要求

ヨーロッパ商業放送連盟は9月8日,ギリシア政府が予定している商業放送テレビ局に対する新規課税について,EU法に違反していないかどうか緊急に審査するよう求める書簡を,EC(欧州委員会)に送った。財政危機に陥ったギリシアでは,包括的な財政再建策の1つとして,商業放送テレビ局の広告収入に対して,20%の新規課税を10月から実施することにしている。これについてヨーロッパ商業放送連盟は,新規課税は,コストのかかるデジタル化推進に影響を及ぼし,2012年末までに予定されている商業放送の設備のデジタル化が遅れてしまうなどとしている。

フィンランド,受信料6%の値上げ申請を決定

フィンランドの公共放送YLEの監督機関である管理評議会は9月7日,2011年の受信料について6%値上げし, 年額245ユーロ(約2万8,000円)にすべきであると政府に申請することを決定した。YLEの受信料はデジタル支援として2005年から2010年まで毎年値上げするという取り決めがあり,2011年以降に対応するため,議会内に超党派の検討グループが設置された。検討グループは2009年4月にテレビ受信料から公共サービスメディア料へ変更し,全世帯から徴収するという制度変更を提案したが,政府は2011年4月に行われる総選挙後まで決定を持ち越した。

EC,仏・西の電気通信事業課税は違法

EUの行政執行機関であるEC(欧州委員会)は,公共放送の広告廃止に伴う財源補てん策として,フランスとスペインが電気通信事業者に課している新税について9月30日,両国政府に課税を停止するよう求める決定を下した。両国は,電気通信事業者の国内事業収益に対して,去年から0.9%の新税を課している。これについてECは,EUの電気通信事業規則に違反していると判断した。両国政府は今後この問題をどうするかについて,2か月以内にEUに返答しなければならない。