放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

CCTVの新社屋付設ビルで大火,関係者拘束

中国中央テレビの新社屋に付設する44階建てのホテルで2月9日夜,花火の火が燃え広がって大火となり,駆けつけた消防隊員1人が死亡,火は5時間半後に消し止められた。北京市消防局の調べによると,花火はCCTVの関係者が警察の制止を振り切り,数百発をビルの空き地を使って違法に打ち上げさせていたということで,その後12人が身柄を拘束された。この火事はネット上では写真つきで速報されたが,CCTVはあとになってから映像なしで伝えたにとどまった。中国で唯一の国家レベルのテレビ局として,独占的な広告収益をあげているCCTVは,市の中心部に極めて豪華な新ビルを建設した一方,政府の意向に沿って批判的な報道は自粛していることから,ネット上は,CCTVに「天罰」が下った,などと快さいを叫ぶ声であふれた。

台湾,大手紙のテレビ経営進出で批判

台湾の大手紙「りんご日報」のオーナーである香港の黎智英(Jimmy Lai)氏が,馬英九総統の側近とされる人物をCEOに招へいしたうえでテレビ経営に進出する方針であることが分かった。これは馬総統が台北市長だったときに副市長を務めた金溥聰氏が2月10日,黎氏系の雑誌のインタビューで明らかにしたもので,金氏は新規の24時間ニュースチャンネルを運営する意向を示した。金氏は台北市の副市長時代,マスコミに対して「おまえの会社の編集長の携帯番号を知っている」などと批判的な記事を書かないようけん制したと言われており,野党陣営は,経済悪化で人気が低落した馬総統が,2012年の総統選挙で再選を果たすために「友好的」なテレビチャンネルを確保しようとする試みと強く批判している。

韓国,IPTVやVODも放送審議の対象に

民間独立審議機関の放送通信審議委員会は2月5日,IPTVやVODなどの放送・通信融合メディアのコンテンツを審議の対象に含めるとした「2009年度主要事業計画」を公表した。委員会が公式に政策を確定,発表したのは初めてである。これについて委員会では,現時点ではあくまでも計画であり,今後,現状調査やデータの蓄積,関連事業者の意見集約など検討すべき課題は多いとしている。

韓国,LG DACOMもIPTV全国サービス開始

通信大手のLG DACOMは2月25日,MBCおよびSBSの地域送出権を持つ地方放送局との間で,IPTV再配信やコンテンツ供給契約を締結し,全国サービスを開始したと発表した。サービスの名称は「myLGtv」で,KTの「MegaTV」に続き,韓国で2番目の全国向けIPTVとなった。LG DACOMは全国で46の同時放送チャンネルを確保し,これまでソウルと首都圏地域の約2万5,000人に限られてきた同時放送を全国に拡大することになった。

インド,政府がメディア諮問委員会を設置

インドでは先のムンバイ同時多発テロ事件を機に,国の安全保障に関わる重大事件を報じるニュースのあり方をめぐって商業テレビ局への批判が続いているが,インド政府は2月20日,行政と各種メディア団体が定期的に意見交換を行うためのメディア諮問委員会を設置した。情報放送省の次官を長に20人のメンバーからなる同委員会は年に最低2回,必要があれば更に会合を持つとしている。政府は委員会設置の目的を,メディア側の自主規制策実施を支援することにあり,メディアの報道の自由を妨げるものではない,としている。委員会メンバーに当初提案されていた内務・外務・国防各省の担当者は除外された。テロ事件後,厳しい批判にさらされたニュース専門商業衛星テレビ局の業界団体のNBA(News Broadcasters Association)は既に独自の自主規制策を打ち出している。

パキスタン,銃撃でGeo TVの記者が死亡

アフガニスタンと国境を接するパキスタン北西辺境州のスワット渓谷を取材中だった同国のニュース専門衛星テレビGeo Newsの記者が,2月18日,銃撃を受け死亡した。同記者が襲撃された場所はタリバン系武装組織の拠点とされるマッタ(Matta)地区で,同地では地元タリバン指導者と現地の強硬派イスラム聖職者の会合が予定されていたという。これで,これまで3か月の間に同地域で犠牲となったジャーナリストは2人となった。