放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英デジタルテレビ,70%に普及

イギリスの放送と通信分野の規制監督機関であるOfcom(Office of Communications) は3月17日,デジタル普及状況報告書を発表した。報告書によると,2005年末でデジタルテレビは全世帯の約70%(1,750万世帯)に普及した。特にウェールズ地方では80% に到達し,2008年半ば以降に全国で初めて地上アナログ放送が中止される予定のボーダー地域でも71% の世帯がデジタル化した。

英BBC,HDTV放送実験計画を発表

イギリスの公共放送BBC は3月26日,6月に開催されるサッカーのワールドカップドイツ大会およびテニスのウィンブルドン大会で,HDTV による中継放送の実験を行うと発表した。また,これに先立ち『Planet Earth』や『Galapagos』など人気ドキュメンタリー番組のHDTV 放送を5月に実施する。帯域に余裕がない地上デジタル放送のFreeview では提供されないため,視聴者は,衛星放送のSky Digital や一部のケーブル加入者に限定される。

仏ケーブル業界,1社による独占体制へ

ヨーロッパやアジアなど19 か国でケーブル事業を行う米Liberty Global は3月23日,傘下のUPC France を売却することでCinven およびAltice と合意書に調印したと発表した。収益性の改善が見込めない市場から撤退するもので,6月末までに売却を完了する予定。フランスでは旧4大事業者のうち,UPC France が2005年4月,その親会社UGC(Liberty 傘下)が買収したNoos を合併した。一方投資ファンドのCinven とルクセンブルクのケーブル事業者Altice は2005年3月に残る2社(NC Numericable とFrance Telecom Cable)を買収したため,2大事業者体制となっていた。Cinven とAltice がUPC France を買収すれば,旧4大事業者を傘下に収め,ケーブル加入世帯の約90% を占めることになる。2大事業者が合併する衛星放送に続いて,ケーブルでも寡占化が進むことになった。

伊「地上デジタルパイロット州」の完全移行期限を一本化

イタリアの放送と通信を所管する通信省は,これまでにサルデーニャ州とヴァッレ・ダオスタ州を全国に先駆けて地上アナログ放送を終了しデジタル放送へ完全移行する「デジタルパイロット州」に指定してきた。そしてデジタルへの移行期限を主要都市(県庁所在地)レベルで2006年3月15日,全州レベルでは7 月末としてきた。しかし同省は3月17日,両州におけるデジタル・デコーダーの世帯普及率が60% 程度にとどまることから,主要都市の完全移行期限も州全体と同じ7月末に延期すると発表した。

Astra衛星,ドイツで有料プラットホーム導入へ

ルクセンブルクの衛星事業者SES Astra は2月28日,2007年からドイツで,これまでの無料のデジタル放送プラットホームに代え,有料プラットホームを導入する,と発表した。このサービスは,番組の送信,信号のスクランブル化とその解除用のカード発行を含む。こうした業務は,Astra が2004年に有料衛星放送Premiere から買収した子会社Astra Platform Servicesが中心になって行う。計画によれば,ドイツの衛星放送受信者は,毎月約5 ユーロ(約700円)の「衛星料金」をAstra に払うことになる。衛星料金の一部は,放送事業者にも配分される。この計画に商業放送は賛成しているが,公共放送は強く反対しているほか,政治家や消費者団体などからも批判の声が上がっている。地上放送用の周波数が少ないドイツでは,アナログ放送も含めると,現在約1,620万世帯がAstra の無料プラットホームでテレビ視聴している。

フィンランド,初の携帯端末向け放送免許付与

フィンランド政府は3月23日,DVB-H 技術を使用した携帯端末向け放送の運用免許をDigita に付与することを決定した。携帯端末向け放送には,地上デジタルテレビ放送に確保された第4 の周波数帯を利用する。Digita は,公共放送YLE の送信部門が子会社化された企業で,2005年以後株式の100% をフランスの送信会社TDF が所有している。Digita は,2006年中にヘルシンキを中心に全人口の29% をカバーする予定である。