放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

05.08.1ハリウッド,デジタルシネマの仕様で合意

アメリカの大手映画7社が出資しているデジタルシネマ・イニシアチブ(DCI)は,7月27日,3年余りの検討を経て合意した今後のデジタルシネマの製作や配給の技術仕様を発表した。それによると,上映画面解像度は2K(横2,048×縦1,080)もしくは4K(横4,096×縦2,160)となる(HDTVでは縦の解像度が1,080)。また圧縮方式は目に優しいとされるJPEG2000に決められた。デジタルシネマの衛星やネットでの送受信は著作権保護のため暗号化技術が使われる。主にポストプロダクション段階に止まっていたデジタルシネマが,この仕様で製作から流通まで広がることになる。

05.08.01カナダCBCが労使紛争でロックアウト

カナダの公共放送CBCは8月15日,労使交渉の決裂を受けて5,500人の組合員に対してロックアウト(事業所閉鎖)を実施,同局始まって以来最悪の労使紛争に発展した。政府交付金と広告収入を主な財源とするCBCは,ケーブルテレビや衛星放送との激しい競争にさらされ,政府交付金も今後5年間増額しないことが決まっている。そうした中,CBCは新規採用者を常勤ではなく契約社員とする計画を打ち出したが,これに対して労組が反発を強めていた。CBCは職員の10%にあたる非組合員によって当面の放送を維持するとしている。

05.08.01米デジタルテレビの出荷が前年比45%増

全米家電協会(CEA)は8月19日,2005年上半期の米国内のデジタルテレビ出荷台数が380万台となり,前年比45%の大幅増を記録したと発表した。CEAによれば工場から販売店に出荷されるデジタルテレビの平均価格が今年1月以降で200 ドル低下して,1,159ドルにまで下がったことが背景にある。この価格低下傾向が続けば今年いっぱいは各月の売上が前月を上回り続けるのではないかと見られている。

05.08.01米衛星ラジオ,携帯機器と録音機能で販路拡大へ

アメリカの衛星ラジオ2番手で加入者133万人(6 月現在)のシリウスは,8月25日,MP3プレーヤー機能を盛り込んだ新型携帯機器「S50」を10月に発売すると発表した。「S50」はトランプ程度のサイズで,小売価格は360ドル,50時間分の番組収録ができる。また,加入者441万人の最大手XMは,7月末に韓国のメーカー,サムソンと契約し,年内にシリウスと同様,MP3プレーヤー機能を持つ機種を発売する。また,同社は楽曲のダウンロードサービス業者ナップスターと契約し,加入者がパソコンを通じて,XM が放送した楽曲を購入できるサービスも年内に開始する。

05.08.01米インテルサットとパンナムサット合併へ

世界的な衛星通信会社インテルサットとパンナムサットが8月29日,合併契約に調印した。合併が司法省やFCCに認められれば,インテルサットの持つ28 の衛星とパンナムサットの25の衛星をあわせて53の衛星を持つ世界最大の衛星通信会社が誕生する。世界220の国や地域で衛星運用とデータや映像の配信をすることになり,年間収入19億ドル以上が見込まれる。パンナムサットは,2003年4月,ニューズコープに買収されたが,その後,米投資会社が買収し,売却先を探していた。

05.08.01ハリケーンでメディアに大打撃,ネットで情報提供

ハリケーン・カトリーナによる大洪水で,ニューオーリンズのテレビ局は,8月30日,深刻な被害を受けた。新聞は,社屋や印刷所が使えなくなり,避難先からインターネットのサイトを通じて情報を流した。また8つの地元テレビ局のうち,4大ネットワークの系列局がニュースを放送しているが,CBS加盟局の WWL(チャンネル4)だけが放送を継続できた。同局は,街の中心部にある社屋が使えず隣町から放送しているが,3年前に更新した送信塔は,災害に備え,ニューオーリンズの高台に設置したため放送を継続できた。ほかの3局は,ウェブサイトからのストリーミング放送を行ったり,周辺の姉妹局から番組を送出したりしてしのいでいる。また,数十万の契約者を持つケーブルテレビも水が引くまでは復旧がむずかしい状況にある。