調査研究ノート

ヨーロッパの放送オーケストラをめぐる動向

~公共放送の文化支援のあり方とは~

公開:2024年4月1日

ラジオ放送が始まった1920年代、世界各国で公共放送傘下に「放送オーケストラ」や「放送合唱団」が誕生した。ヨーロッパでは100年近くを経た現在も、多くの放送オーケストラが放送向けの演奏ほか、一般向けコンサート、音楽教育プログラムの提供など、音楽文化の振興を目的に活動している。一方、公共放送が経費削減や経営合理化を迫られる中、ここ数年は楽団の閉鎖や縮小など運営の見直しの議論が相次いでいる。イギリス公共放送BBCは2023年に3つのオーケストラの人員20%カットと合唱団を廃止する計画を発表した。しかし音楽家や市民などからの強い反発があり、存続に向けた検討がなされることになった。フランスでは公共ラジオRadio Franceが2つの放送オーケストラと1つの合唱団を運営しているが、マクロン政権下で経費削減を求められ、2019年、2つのオーケストラをそのまま維持する一方、合唱団は団員3割の削減を決めた。またオーストリアでは2023年2月、公共放送ORF会長がオーケストラ廃止を含む経費削減案を発表した。しかし、これまでの実績や貢献を踏まえ、音楽家や市民からの強い反対が出て、存続に向けた検討が行われることになった。クラシック音楽の本場、ドイツは1国としては最多の12の放送オーケストラが存在するが、公共放送改革の中で見直しの議論が起きている。ドイツのオーケストラの業界団体・労働団体は、この動きに反対する声明を出している。

メディア研究部 小笠原晶子

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