連載 メディアは社会の多様性を反映しているか③ 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言

公開:2023年1月1日

メディアが社会の多様な人々の姿や現実,視点や価値観を反映することは,発信する内容の正確さ,公平さ,豊かさを担保するために欠かせない。さらにデジタル化で情報や娯楽の選択肢が広がる中で,身近で有用かつ信頼できるメディアとして「選んでもらう」こと,すなわち将来の存続のためにも重要な課題になっている。#MeToo運動,コロナ禍,Black Lives Matter 運動を経て,社会や情報通信環境の急速な変化にも押され,その認識と危機感を深めたアメリカでは,組織の体制,登用する人材,そして発信するコンテンツに登場する人の多様性を向上するための戦略や目標を示し,実績を報告するメディアが増えている。報道の現場では取材対象の多様性を点検・モニタリングして公表する動きや,多様な取材対象のデータベースをつくり,活用する試みも広がっている。多様性向上に長年取り組んできた全米公共ラジオNPRのキース・ウッズ氏は,メディアの役割は格差のある社会を反映することではなく,多様な視点を伝えることであり,多様な人々が自分を重ねて見ることができるような存在を示すことが重要だとしている。また,日本のメディアの多様性欠如について問題提起してきた東京大学の林香里氏は,多様な人々の声やその課題が可視化されることによって当事者が現状を変えていく力を得ることや,現実社会で小さくなっている人々をより大きな存在にしていくことによって皆がより暮らしやすい社会をつくることができると指摘している。

メディア研究部 青木紀美子/大竹晶子/小笠原晶子

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