世界の公共放送 -制度と財源報告2018

公開:2018年1月30日

NHK放送文化研究所の海外メディア調査グループでは2012年に,「世界の公共放送の制度と財源」報告をまとめた。本稿はその改訂版である。世界の8つの国と地域(イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,スペイン,韓国,台湾,アメリカ)の公共放送について,サービス・企業統治・財源のあり方の観点で調査してまとめた。

前回から5年余りのうちに,主要国では地上デジタル化が終了し,放送と通信の融合が一層進展した。調査したヨーロッパの公共放送では2009年までに融合のための法整備を済ませており,公共放送の業務範囲も放送からネットの利用まで拡大した。それぞれの公共放送局では,ネット上で番組を放送と同時にあるいは見逃し視聴できるサービスを提供している。さらに,BBCでは若者向けテレビチャンネルBBC3を2016年に放送からネットに完全に切り替え,ドイツのARDとZDFは既存のテレビチャンネルを廃止したうえで共同で2016年に若者向けの新たな配信サービスfunkを開始した。フランステレビジョンも2016年にネットとテレビで同時配信される24時間ニュース専門サービスFranceinfoを始めた。

ネットへの展開に合わせて,受信料制度も改正されている。ドイツでは2013年1月に,公平負担の確保を目的に,受信機所有の有無にかかわらず住居単位で一律の料金を徴収する放送負担金制度が導入された。BBC iPlayerによる見逃し視聴は受信許可料の支払い義務から外れていたが,2016年に支払い対象となるよう制度改正が行われた。また,イタリアでは2016年に受信料の徴収業務を電気事業者に委託するよう変更された。

企業統治システムの変更も行われている。BBCでは2017年,業務執行責任を持つBBC理事会を内部に新設する一方,BBCの規制監督は初めて外部の独立機関Ofcomが担うことになった。

このように主要国の公共放送は,メディア環境の変化に対応して変革を続けている。今後も,運営財源の確保や効率化など課題は残る。加えて,視聴者のメディア利用実態や社会構造の変化に対応し「公共放送はどのような任務と役割を果たすべきか」という古くからの問いを再考することも求められるだろう。

メディア研究部田中孝宜中村美子新田哲郎杉内有介広塚洋子斉藤正幸山田賢一大墻 敦 

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