拡大する台湾の「硬派型」ネットメディア

~その現状と課題~

公開:2017年7月1日

台湾では、既存の活字や放送メディアが、中国ビジネスへの配慮から中国政府に遠慮する報道が目立ち、市民の不満を呼んでいる。そのすき間を埋めるべく、2009年頃からネット専業メディアが次々と誕生したが、収入源を広告に依存し、大部分は経営が不安定である。ところが台湾ではここ1~2年、政治や社会の問題を深く報道する「硬派型」のネットメディアがさらに相次いで登場した。本稿ではこのうち、総合型ニュースサイトである「端傳媒」「信傳媒」「上報」の3社と、もっぱら調査報道を旨とする「報道者」を取り上げたが、いずれもビジネスにはなりにくい「硬派型」のメディアである。こうしたメディアのオーナーはあまり表に出たがらないこともあって、メディア所有の目的ははっきりしないが、メディア関係者の間では、「政治的影響力」が目的との見方がある一方、純粋に報道の自由という「公益」を目的としているように見えるケースもある。中でも非営利メディアの「報道者」は、その独自性、ジャーナリズム意識の強さと言う点で非常に光っているが、経済的支援者である童子賢氏という大手企業経営者の善意への依存度が高いという点で、その運営にある種の脆弱性が伴っているのも事実である。台湾の報道の自由度の拡大に大きく貢献したとされる数々のネット専業メディアが、今後いかに経営を軌道に乗せていけるか、注目される。

メディア研究部 山田賢一

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