「メディアの公共性」を重視する台湾新政権のメディア政策(下)

~「財閥のメディア支配」排除~

公開:2017年5月1日

台湾の民進党の新政権は、「メディアの公共性」を重視した政策を展開しており、3月号の(上)編では、公共放送の充実について紹介したが、本稿では、もう1つのテーマである「財閥のメディア支配」排除について見ていく。台湾では、以前からメディアは企業オーナーの所有物という側面が強い。特に2008年、中国時報・工商時報・中国テレビ・中天テレビを傘下に持つ中国時報グループの経営悪化を受けて、食品事業者大手の旺旺グループが同グループを買収した事案は、中国事業で多大な利益を上げる旺旺傘下のメディアの報道が急速に「中国を褒めたたえる」ものになったとされたことから、この問題への世論の関心を高めた。具体的には、財閥系の通信事業者「遠傳」がケーブルテレビ事業者大手の「中嘉網路」の買収で合意した事案について、前政権末期に独立規制機関の国家通信放送委員会(NCC)が条件付きで承認したにもかかわらず、新政権は「脱法行為の疑いがある」としてNCCに再審査を求めた。2017年2月、中嘉網路は売却の断念を発表、新政権による「財閥のメディア支配」排除への強い態度が反映された形である。今後は、現在NCCが策定中の「反メディア集中法案」がどのような内容となって国会に提出されるか、その法案が成立するかどうかが焦点となる。

メディア研究部 山田賢一

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