「メディアの公共性」を重視する

台湾新政権のメディア政策(上)

~公共放送の充実~

公開:2017年3月1日

台湾で2016年5月に成立した新政権は、メディアの公共性を重視した改革に取り組んでいる。その重点は①公共放送の充実、②財閥のメディア支配排除、の2点だが、本稿ではこのうちまず①を取り上げる。行政院(内閣)が候補者をリストアップする公共テレビの理事人事を見ると、「メディア研究者」と「女性」の登用が目立ち、理事長も女性である。新任理事長は歴史ドラマの制作や商業局への番組販売など、新しい取り組みに意欲を見せているほか、自ら企業界や文化界に寄付を呼びかけるなど、収入増加のための活動にも力を入れている。また、所轄官庁の文化部では、公共テレビを中心に中華テレビや客家チャンネル、国際放送チャンネルなどが加わる公共放送グループの構成員拡大も視野に、公共テレビ法改正への取り組みを進めている。こうした新政権の政策に対し、与党の民進党や与党に近い時代力量の関係者はまずまず肯定的だが、商業局が公共放送の規模拡大に反対の立場である他、野党国民党やメディア研究者の一部も公共放送は「小さくて美しい」状態がベストとの見方を示しており、公共放送の充実が幅広いコンセンサスを得たとまでは言えないのも事実である。今後は、公共放送グループの構成をどうするか、公共テレビに対する年間9億元(約32億円)の政府交付金をどこまで増やせるかが議論の焦点となるが、蔡英文政権は現在、年金改革や同性婚の合法化といった、台湾における関心度の高い懸案をいくつも抱えており、公共テレビ法改正案がいつ国会に提出されて議論されるのか、見通しが立っていないことが最大の問題と思われる。

メディア研究部 山田賢一

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