
- Q
- 「コンビニに行って、募金をしてきた」「ゲームで課金してアイテムを手に入れる」という言い方は、おかしいのでしょうか。
- A
- 両方とも、漢字の意味から考えると、本来の用法ではないとされるのが一般的です。ただし、新しい用法が生まれてくるのはそれなりの理由があってのことで、まずは、社会で現在どのように受け止められているのかを把握しておくことが重要だと思います。
まず「募金」については、このコーナーで以前にも取り上げたことがあります(2011年6月)。この「募」は、「つのる」、つまり「いろいろな人に呼びかけて集める、募集する」という意味です。「募金」は、本来は、「お金を出してくれるよう、いろいろな人に呼びかけて、集める」ような状況で使うことばです。
なお、同じく「募」という字を使っている「応募」は、「ある呼びかけ(募集)に応じて、書類などを出す」ということです。
次に「課金」についてです。「課す(課する)」ということばがありますが、これは「支払いなどを義務づける」という意味です。「あるサービスなどを利用した人に対して、お金を払わせる」ような状況で使うのが、「課金」の本来の用法です。
いったんまとめると、「募金」は「お金を集めること」、「課金」は「支払いを義務づけること」が本来の用法です。
これに対して、ご質問にある例文のように、「募金」「課金」を、「お金を出す」状況で使う新しい用法が、特に最近多くなっています。調査した結果を見てみましょう。

まず「募金」については、全体としていちばん主流の回答は、グラフにある(A)のような本来の用法と(B)のような新用法に関して「両方ともおかしくない」というものです。
ただし30代では、本来の用法〔=(A)〕は「おかしい」という回答(46%)のほうがわずかに多くなっています。
一方80歳以上では、新用法〔=(B)〕は「おかしい」という回答(25%)が、ほかの年代に比べて多くなっています。
全体として見ると、80歳未満では新用法を「おかしい」とする回答が少なくなっています。つまり、これは「新用法」とは言っても、ずいぶん昔から定着している用法であることが、ここからわかるでしょう。

次に「課金」について見てみると、全体としていちばん主流の回答は、(A)のような本来の用法に関して「おかしい」とするものでした。ただし、一見してわかるとおり年代差が非常に激しく、30代から上では年代が高くなるにつれてこの回答が少なくなっています。
それに対して、年代の高い層で圧倒的に多いのは「わからない」という回答です。
全体としては、ここに見られる年代差の激しさから、「課金」の新用法がものすごいスピードで広まったらしいことが浮かび上がってきます。
さて、現時点での全体の割合だけを見れば、「募金」「課金」のいずれの新用法も、もはや問題ないものと考えてよさそうな気もしてきます。
しかし、ここから先はかなり主観が入ってくるのですが、「募金」の新用法は広まってからかなり時間がたっているのに対して、「課金」のほうは現在進行中の急速な変化であるところが気になります。
「課金」のようにまさに変化の真っただ中にあることばについては、新用法の扱いに関して、やや慎重になる(状況が落ち着くまで、時間を置いて考える)必要があるように思うのですが、いかがでしょうか。一方「募金」については、新用法の中でも「すでに定着した新用法」に該当します。街頭募金ならぬ「該当募金」だというわけです。