"何もありませんが"とは言わなくなっていくのか

~2022年「日本語のゆれに関する調査」から(2)~

公開:2023年1月1日

「日本語のゆれに関する調査」の結果について報告をおこなう。さまざまな配慮表現をめぐる調査結果から、次のようなことを指摘する。
▶「お足元の悪いところ」「おかげさまで」「〔メール冒頭で〕お疲れさまです」「〔会話冒頭で〕お疲れさまです」に関して、全体の結果としては、全面的に支持する回答〔=「自分でも言う(書く)・おかしくない」〕が過半数を占めている。それに対して、「高いところから失礼します」「つまらないものですが」「何もありませんが」のそれぞれにおける全面的な支持は半数以下であり、これ以外の選択肢にも回答が分散している。特に「何もありませんが」においては、全面的に支持する回答と、全面的に支持しない回答〔=「自分では言わない・おかしい」〕が同程度になっており、現代日本において感じられ方がさまざまであるようすが見て取れる。
▶どちらの言い方が感じがいいか(ふさわしいか)を尋ねた設問「[遅くなって~大変お待たせして]しまい」「お越し[いただき~くださり]」「いつでも[かまいません~結構です]」「教えて[いただきたいです~いただけますか]」「ありがとうござい[ます~ました]」に関して、「[遅くなって~大変お待たせして]しまい」では「[遅くなって]のほうが感じがいい」が半数近くと比較的回答が集中しているが、これ以外の設問ではいろいろな選択肢に回答が分散している。
▶[60歳以上]の集団では、「おかげさまで」「何もありませんが」「いつでも[結構です]」「ありがとうござい[ました]」への支持が相対的に多く、「〔メール冒頭で〕〔会話冒頭で〕お疲れさまです」への支持が相対的に少ない。また大卒者の集団では、「お足元の悪いところ」「おかげさまで」「〔メール冒頭で〕お疲れさまです」「[遅くなって]しまい」「お越し[いただき]」「教えて[いただけますか]」への支持が相対的に多い。
▶10年前の調査との比較から、各年代にわたって共通に見られる傾向として、「〔メール冒頭で〕お疲れさまです」の一般化と、「つまらないものですが」の非一般化〔=衰退〕が観察される。

メディア研究部 塩田雄大

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