「うまみ」は漢字で書ける?うま味や旨味はOK?

公開:2022年12月1日

Q
「うまみ」は漢字で「うま味」と書いてもいいですか?
A
原則は、「うまみ」です。ひらがなで書きます。
ただし、「うまみ調味料」の場合は、「うま味」でもよいとお答えしています。
<説明>

コンビニエンスストアのカップ麺コーナーに行くと、「旨み芳醇」「旨味凝縮」など、漢字を交えたいろいろな「うまみ」がパッケージにプリントされています。放送現場からも、字幕に「旨味」や「うま味」と漢字で書いていいかという問い合わせが来ます。

NHKの原則は、ひらがなで「うまみ」です。漢字表記辞典とアクセント新辞典には、「うまみ」しか載せていません。

なぜ、ひらがなで「うまみ」なのでしょう。

「肉のうまみあふれるステーキ」や「野菜のうまみたっぷりの鍋」。これらの「うまみ」は、味が良いという意味の形容詞「うまい」の語幹「うま」に、接尾語「み」がついたことばです。「み」がつくことで、形容詞が名詞化し、味の良い状態、味の良いものという意味になります。この「み」は、「味(あじ)」とは関係ありません。

似たような「み」は、ほかにもあります。「強い+み」で「強み」、「温かい+み」で「温かみ」などです。「あの人の強みは交渉力だ」「温かみのある文章」などと言われると、うれしいですよね。

さらに、若い人たちの間では、「やばい+み」で「やばみ」、「うれしい+み」で「うれしみ」などの造語も使われています。

この「み」には「味(あじ)」の意味がないので、「うま味」と書くことはできません。ひらがなで書きます。国語辞典のなかには、「うま味」の「味」は当て字であると説明しているものもあります。接尾語「さ」がついて「うまさ」になるのと似ています。

ちなみに、「この商売はうまみがある」のように、「うまみ」が大きなもうけという意味で使われる場合もあります。この「み」が「味」ではないことは明らかですね。接尾語「み」が、たまたま「味」の音読みと同じだったために起きている現象です。

一方で、日本料理のだしなどの味を、「うまみ」という場合があります。昆布やかつお節のだしの味ですね。グルタミン酸やイノシン酸などから生まれる味です。これらを、漢字の「味」を使って「うま味」と書いているものがありますが、これも原則は「うまみ」です。ただ、「うまみ調味料」の場合は、一種の固有名詞になっているという現実から、「うま味調味料」でもよいとお答えしています。

なお、「うま」を漢字で「旨み」「旨味」と書いてあるものも目にします。「旨」は常用漢字ではありません。このため、放送では「旨み」「旨味」は、基本的に使いません。

食べ物の味には、同じように「み」が付くことばが多くあります。それらはどうでしょうか?

「形容詞+み」 の例として、「甘い+み」で「甘み」、「辛い+み」で「辛み」、「苦い+み」で「苦み」、「渋い+み」で「渋み」があります。この場合の「み」も接尾語ですので、ひらがなです。「このリンゴは甘みが強い」「この唐辛子は辛みが強い」「このチョコレートは苦みが強い」「このお茶は渋みが強い」などです。

なお、甘い菓子類を具体的にさす場合は「甘味(あまみ、かんみ)」と書きます。

一方、「酸味(さんみ)」「塩味(えんみ)」もあります。これは「酸」や「塩」という漢語に、味を意味する「味」がついたものですので、漢字「味」が基本です。

ちょっとややこしいですが、ことばの成り立ちを考えると、違いがわかると思います。

一方、これらの「うまみ」「甘み」「辛み」「苦み」「渋み」ですが、国語辞典のなかには「うま味」「甘味」「辛味」「苦味」「渋味」と、「味」で書くことを認めるものもあります。世の中で「味」の使用が大きく広がれば、将来的には、放送のことばも変える必要が生じるかもしれません。しかし、まだその時期ではないと考えています。

繰り返しますが、原則は「うまみ」です。「うま味調味料」のような書き方は例外となります。

冬に、肉や魚や野菜のうまみたっぷりの鍋を食べて、寒さを乗り切りましょう。

メディア研究部・放送用語 石井 伸壽

※NHKサイトを離れます