「持ち前」と「持ち味」のちがい

公開:2022年10月1日

Q
野球の話題で「○○選手 持ち前のストレート」と表現したけれど、どうもしっくりきませんでした。どうしてでしょうか。「持ち味」という言い方のほうがよかったのでしょうか。
A
「持ち前」「持ち味」ともに使えそうですが、意味合いが異なります。

「持ち前」は「その人にもともと備わっているもの。生まれつきのもの」(『明鏡国語辞典第三版』)と定義されます。つまり、生来のもの、「性分」に似たニュアンスになります。「持ち前の根性を発揮した」「持ち前の明るさで乗り切った」などと使われることが多いでしょう。
そのため、「持ち前のストレート」と表現した場合、“その選手には、生まれつき野球の才能が備わっており、その才能によって、ほかの人にはまねできないようなストレートを投げることができている”というようなニュアンスになります。

一方、「持ち味」は「その人物・作品などがもつ独特の趣や味わい」(『明鏡国語辞典第三版』)と定義されます。「役者の持ち味が出た作品」などと使われます。
そのため、「持ち味のストレート」の表現した場合は“その選手の投げるストレートこそが、この選手の最大の特色”といった意味合いになります。

さて、「持ち前」と「持ち味」の微妙な違い、伝わったでしょうか。
あなたの好きな歌手は「“持ち前”の声のよさ」「“持ち味”の声のよさ」どちらでしょう?
その歌手の声の良さは、天性のもの。そして、その美声こそが、その歌手の最大の特色!といった場合は、「どちらも」と言いたくなるかもしれません。
悩んだときは・・「○○さんらしい声の良さ」で、いかがでしょうか。

メディア研究部・放送用語 藤井まどか

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