- Q
- 「行きません」と「行かないです」は、どちらを使ったらよいのでしょうか。
- A
- どちらか一方が文法的に間違っているということはないのですが、放送など、特にかしこまったことばを使うような場合には「行きません」のほうがよく用いられます。
「…ません」と「…ないです」の問題は、実はとても複雑です。ちょっと考えてみましょう。
【名詞】 学生です
⇒学生ではありません(かしこまった印象・書きことば的)
学生ではないです(くだけた印象・話しことば的)
名詞の肯定文「学生です」を否定文にする場合、現代語では、「学生ではありません」「学生ではないです」のどちらも可能です。ただし、「学生ではないです」のほうはややくだけた印象があり、特に書きことばで使うと、場合によっては違和感を与えてしまうこともあります。このような違いを、「文体差」と言います。
この文体差は、形容詞の否定文、動詞の否定文のときにも同じように見られます。
【形容詞】寒いです ⇒寒くありません
寒くないです
【動詞】 行きます ⇒行きません
行かないです
この「寒くないです」「行かないです」は、「寒くありません」「行きません」に比べて、くだけた印象を感じさせます。
また、ものが「ない〔=非存在〕」ことを表す「(時間が)ありません~ないです」や、動作の「勧誘」を表す「行きませんか~行かないですか」などの言い方もありますが、こうしたものでも同じように文体差があります。
ですが、それぞれの感じ方の「差の大きさ」は、それぞれ異なります。
調査をしてみたところ、【形容詞(否定)】の「寒くないです」や【名詞(非存在)】の「時間がないです」は、「おかしい」と感じる人がそれほど多くはありません(むしろ、「寒くありません」を「おかしい」と感じる人のほうが多くなっているようでした)。
一方、【名詞(否定)】の「学生ではないです」、【動詞(否定)】の「行けないです」「行かないです」では、「おかしい」と感じる人が全体の3分の1程度に達しています。また、【動詞(勧誘)】の「行かないですか」については、おかしいと感じる人が半数を超えています。
なお、この調査結果の数値の読み取り方ですが、「ません~ないです」はどのような場面で用いられるのかによって感じられ方・適切さが大きく変わってくるものであることに注意が必要です。ここではあくまで「2つの言い方のみを単純に比べたとしたら」という仮の前提で答えてもらったものとしてお考えください。くだけた会話であれば、「…ないです」が使われる割合はある程度高くなるはずです。
どうでしょう、むずかしくありませんでしたでしょうか。うまく伝えられたかどうか、自信がないです。