「ご利用いただけます」？「ご利用になれます」？

それぞれの言い方について、文法的な成り立ちを説明してみます。まず「ご利用になれます」から見ていきましょう。

• 「利用する」〔元になる動詞〕
  ⇒「ご利用になる」〔尊敬表現〕
  　　⇒「ご利用になれる」〔尊敬表現＋可能〕
  　　　⇒「ご利用になれます」〔尊敬表現＋可能＋丁寧〕

次に、「ご利用いただけます」についてです。

• 「利用する」〔元になる動詞〕
  ⇒「ご利用いただく」〔謙譲表現〕（詳しく言うと「謙譲語Ⅰ」と呼ばれるものです）
  　　⇒「ご利用いただける」〔謙譲表現＋可能〕
  　　　⇒「ご利用いただけます」〔謙譲表現＋可能＋丁寧〕

「ご利用になる」は、「（あなたが）利用する」という〔聞き手側の行為〕を高く位置付ける尊敬表現です。それに対して「ご利用いただく」は、「（私が、あなたに）利用してもらう」（それによって「私」が何らかの恩恵を得る）という〔話し手側の行為〕を低く位置付ける謙譲表現であるということになります。

では、「…になれます」と「…いただけます」では要するにどちらがふさわしい言い方なのかを考えてみると、これは前の部分のことばや状況、文脈によって異なってくるもので、一概には言えません。「ご利用～」について全国調査をおこなった結果では、「【ご利用いただけます】のほうが感じがいい」および「どちらかといえば【ご利用いただけます】のほうがより感じがいい」と答えた人が多くなりました（図１）。
　ただし、ほかのことばのペア（「ご応募になれます」と「ご応募いただけます」、「ご覧になれます」と「ご覧いただけます」）について調べたところ、その占める割合は語ごとにかなり異なるということも明らかになりました。「ご応募～」では「【…いただけます】のほうが感じがいい」が圧倒的ですが、「ご覧～」ではそれほどでもありません（図２、３）。言い方のふさわしさに関しては、一語一語について考えていく必要がありそうです。

ややこしい内容でしたが、ご理解いただけましたでしょうか。