すべき?するべき?

公開:2021年4月1日

Q
「解決すべき(・・・)課題」「解決するべき(・・・・)課題」、どちらがよいでしょうか。
A
現代語としては、どちらでもかまいません。「すべき」のほうが、より伝統的な形です。ただし話しことばの場合には、たとえば「解決しなければならない課題」といった言い方に替えることはできないか、一度考えるようにしてみてもいいかもしれません。

<解説>

この「べき」は、「べし」ということばを活用させたものです。これは、文語(昔の書きことば)で使われる助動詞です。ある動詞のあとに「べし」を連ねる場合、【動詞終止形+「べし」】という形になります。

たとえば次のようなものです。この「打つ」「向かう」は、「終止形」です。

  • 「やや内角をねらい、えぐりこむようにして、打つべし! 打つべし!」
    (漫画『あしたのジョー』での矢吹丈のセリフ)
  • 「自分とは何で どこへ向かうべきか 問い続ければ見えてくる」
    (「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」作詞・歌 アンジェラ・アキ)

いろいろな動詞の中には、文語と現代口語(今の話しことば)とで終止形が大きく異なるものもあるのですが、「打つ」「向かう」についてはこの問題はありません。

さて、ここでご質問の「解決すべき~解決するべき」の「す~する」に着目してみましょう。「す」は文語での終止形、「する」は現代口語での終止形です。終止形が、時がたつのにつれて、「す」から「する」に様変わりしたものなのです。

つまり、こういうことになります。

①【文語での終止形「す」+「べし」】ととらえた場合⇒「解決すべき(・・・)課題」

② 【現代口語での終止形「する」+「べし」】ととらえた場合⇒「解決するべき(・・・・)課題」

「べし」はもともと文語の助動詞ですから、上に付く動詞のほうもそれに合わせる形で文語「す」を採用して①のようにするのは、まったく筋が通っています。一方、この言い回しは現代口語でも使うのだから、動詞の部分については現代口語「する」にして②のようにするというのも、なるほど一理あります。

全国調査をしてみたところ、「すべき」〔=①〕を支持する人のほうが、「するべき」〔=②〕を支持する人よりも多いことがわかりました。

またこの調査では、(a)「[解決すべき/解決するべき]課題が多い。」と、(b)「早く[解決すべき/解決するべき]だ。」という2つの形式について尋ねたのですが、回答が「すべき」に集中する割合は、(a)のほうがやや高くなっています。(a)での[解決すべき/解決するべき]は、そのあとの名詞「課題」を修飾する形になっています。もしかすると、このように名詞を修飾する場合には、この部分のことばの長さをできるだけ短くコンパクトにしたいという意識(「するべき」よりも「すべき」のほうが短い)が、やや強く働いているのかもしれません。

ほかのことばについて考えてみると、「恥ずべきところ」は①のタイプですが(文語終止形「恥ず」)、これを②のタイプにした「恥じるべきところ」というような言い方(現代口語終止形「恥じる」)は、それほど見聞きしないように思います。

うーん、日本語、おそるべし。

すべきするべきグラフ

『放送研究と調査』2018年12月号、2021年2月号掲載

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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