「案内させていただきます」?「ご案内いたします」?

公開:2020年10月1日

Q
「案内させていただきます」と「ご案内いたします」とでは、言い方としてどちらがよいのでしょうか。
A
「どちらか一方が絶対によい」というようなことは言えず、場合によります。全般的には、その行為が相手に「迷惑」をかけるおそれがあるときには「させていただきます」が選ばれ、「恩恵」を与える可能性があるときには「〔お/ご〕~(いた)します」が選ばれる場合があるといったおおまかな傾向が見られるようです。

<解説>

ややこしい話を始めますが、お許しください。最初に「案内させていただきます」について考えてみると、ここでの「させる」は、「使役」というよりも「許可」(「私」が案内することを「あなた」が「放任する」「容認する」「邪魔をしない」といったニュアンスも含む)の意味で使われているととらえるのがよいように思います。そして「いただく」は、「私」が何らかの利益・恩恵を得ること〔=「話し手の受益」〕を表します。そして「話し手の受益」は、結果的に「聞き手に何らかの迷惑がかかる」場合もよくあるものです。

一方「ご案内いたします」については、これに関連することとして、以前に「書類をお持ちします」と「書類を持ってまいります」の違いを取り上げたことがあります(2015年8月号)。その際、【お持ちします】は、多くの場合には最終的にそのものが「聞き手(相手)」の所有物になったり、「聞き手(相手)」の利益につながったりすること〔=「聞き手の受益」〕を表すと説明しました。今回の「ご案内いたします」も、これと同じように「聞き手の受益」と考えて差し支えないと思います。

いったんまとめると、次のように言うことができそうです。
①「させていただきます」:話し手の受益(および聞き手への迷惑)と結びつく[「話し手がトクをする」という見解を示す]ことが多い
②「〔お/ご〕~(いた)します」:聞き手の受益と結びつく[「聞き手がトクをする」という見解を示す]ことがある

②は、①と比べると、相対的に聞き手の受益と結び付く場合がやや多いという程度にお考えください。たとえば「お邪魔いたします・ご請求します」のように、聞き手がトクをするわけではないものもたくさんあります。

次に、こうした言い方について調査をしてみた結果をご紹介します。まず、グラフでいちばん上の〔応募〕は、話し手が自分の将来を良くする目的で応募するわけですから、「話し手の受益」が比較的大きいものとしてとらえられるでしょう(応募する人数が多くなればなるほど会社側の手間は増えるので、聞き手への迷惑とも結びついていると考えられます)。真ん中の〔遠慮〕については、話し手は自分の都合・意志で「遠慮」するので、「遠慮」することが「話し手の受益」となるはずです。そしていちばん下の〔案内〕は、案内することによって「自分(話し手)がトクをする」ことよりも、「相手(聞き手)がトクをする」側面のほうが大きいと考えられるでしょう。調査の結果では、「話し手の受益(および聞き手への迷惑)」が大きいものは「させていただきます」が好まれ、反対に「聞き手の受益」が大きいものでは「〔お/ご〕~(いた)します」が好まれるという傾向が確認されました。

ここまでご説明いたしましたが、どうでしょう、おトクな情報だったでしょうか。いや、わかりにくい文章で「迷惑」だったとしたら、「ここまで説明させていただきましたが」と言い直しておきます。

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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