「新型コロナウイルス」関連のことば ~「パンデミック」のアクセント~ ことば放送現場の疑問・視聴者の疑問 公開:2020年5月1日 Q 新型コロナウイルス関連のニュースで使われる「パンデミック」のアクセントを教えてほしい。 A 放送では、「パンデ\ミック」もしくは「パンデミ\ック」という発音をお勧めします。 <解説> 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、2020年3月11日の記者会見で、世界で感染が拡がりつつある新型コロナウイルスについて、「パンデミックとみなせる」と表明して以降、「パンデミック」は、連日、ニュースでよく耳にすることばとなりました。「パンデミック」は、「(感染症の)世界的大流行」を意味します。 この「パンデミック」のアクセントについては、放送を聞いている限り、主に以下の3通りの言い方が使われているようです(「\」は音の下がり目の位置を表します)。 a)パンデ\ミック b)パンデミ\ック c)パ\ンデミック 通常、外来語の名詞のアクセントでは、4拍以上の語の場合は、(音韻環境にもよりますが)後から数えて3拍のところに音の下がり目がある(ただし、後ろから数えて3拍目が「特殊拍(「ン」「ー」「ッ」)」の場合には、下がり目がその一つ前にずれる)傾向があります。 例) ブラ\ウス(4拍) チョコレ\ート(5拍) ブルーマウ\ンテン(8拍) この傾向にならえば、「パンデミック」(6拍)は、後から3拍のところに音の下がり目があるb)[パンデミ\ック]となります。しかし、比較的新しく、まだ日本語としてなじんでいない語は、原語に近いアクセントとなる傾向があるため、英語のpandemicの発音[pændémɪk]に近い、a)[パンデ\ミック]も十分あり得るアクセントとなります。『NHK日本語発音アクセント新辞典』(2016)では、原音に近い[パンデ\ミック]を第1アクセント、後から数えて3拍のところに音の下がり目がある[パンデミ\ック]を第2アクセントとして掲載しています。 一方、語の最初の拍の後に音の下がり目があるc)[パ\ンデミック]も、時々、耳にします。最近の文研の調査報告でも、「後から2拍目が“促音[ッ]”の外来語は、(中略)近年は頭高型が現れやすくなっている」(塩田2016)という傾向が指摘されており、「パンデミック」の発音にもその傾向が現れているとも考えられます。しかし、放送では当面は、外来語アクセントの従来の考え方にしたがって、上記の2つのうちのどちらかのアクセントを使用することをお勧めします。 (参考文献) 塩田雄大(2016)「NHKアクセント辞典 “新辞典”への大改訂④ 外来語のアクセントの現況~在来語化する外来語~」『放送研究と調査』66(10), pp.84-102 メディア研究部・放送用語 滝島雅子 ※NHKサイトを離れます
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、2020年3月11日の記者会見で、世界で感染が拡がりつつある新型コロナウイルスについて、「パンデミックとみなせる」と表明して以降、「パンデミック」は、連日、ニュースでよく耳にすることばとなりました。「パンデミック」は、「(感染症の)世界的大流行」を意味します。
この「パンデミック」のアクセントについては、放送を聞いている限り、主に以下の3通りの言い方が使われているようです(「\」は音の下がり目の位置を表します)。
a)パンデ\ミック b)パンデミ\ック c)パ\ンデミック
通常、外来語の名詞のアクセントでは、4拍以上の語の場合は、(音韻環境にもよりますが)後から数えて3拍のところに音の下がり目がある(ただし、後ろから数えて3拍目が「特殊拍(「ン」「ー」「ッ」)」の場合には、下がり目がその一つ前にずれる)傾向があります。
例) ブラ\ウス(4拍) チョコレ\ート(5拍) ブルーマウ\ンテン(8拍)
この傾向にならえば、「パンデミック」(6拍)は、後から3拍のところに音の下がり目があるb)[パンデミ\ック]となります。しかし、比較的新しく、まだ日本語としてなじんでいない語は、原語に近いアクセントとなる傾向があるため、英語のpandemicの発音[pændémɪk]に近い、a)[パンデ\ミック]も十分あり得るアクセントとなります。『NHK日本語発音アクセント新辞典』(2016)では、原音に近い[パンデ\ミック]を第1アクセント、後から数えて3拍のところに音の下がり目がある[パンデミ\ック]を第2アクセントとして掲載しています。
一方、語の最初の拍の後に音の下がり目があるc)[パ\ンデミック]も、時々、耳にします。最近の文研の調査報告でも、「後から2拍目が“促音[ッ]”の外来語は、(中略)近年は頭高型が現れやすくなっている」(塩田2016)という傾向が指摘されており、「パンデミック」の発音にもその傾向が現れているとも考えられます。しかし、放送では当面は、外来語アクセントの従来の考え方にしたがって、上記の2つのうちのどちらかのアクセントを使用することをお勧めします。
(参考文献)
塩田雄大(2016)「NHKアクセント辞典 “新辞典”への大改訂④ 外来語のアクセントの現況~在来語化する外来語~」『放送研究と調査』66(10), pp.84-102