- Q
- ポーランドの地方から首都であるワルシャワに暮らすために出て行くことを言うのに「上京」と言ったところ、違和感があるという意見があった。放送で使うのに問題はないだろうか。
- A
- 「上京」は「京=都=首都」に「上る=行く」ことであると考えれば、外国のことについて言っても問題はありません。
しかし、以下に示すとおり、違和感があるという意見にもうなずけます。ひと言で言わなくてもいいのであれば、「上京」を使わず、「ワルシャワで暮らすために、故郷を離れた」あるいは「ワルシャワに行く」だけで十分伝わります。いくつかの表現のなかで、違和感のない言い方を選ぶこともたいせつです。
「上京」の使い方
公開:2020年2月1日
メディア研究部・放送用語 山下洋子
※NHKサイトを離れます
国語辞典では「上京」の意味を「地方から都へ行くこと。現在は、東京へ行くこと」(『大辞林』第4版)、「都へのぼること。今は東京へ行くこと」(『広辞苑』第7版) など、東京へ行くことに限定しています。
また、『日本国語大辞典』(第2版)には、「みやこにのぼること。昔は、地方から京都に行くこと。今では、地方から東京に行くこと。」とあるように、かつては京都に行くことを指していたことばの意味が、現代では東京に行くことに変化していることが示されています。
こうした辞書に示されている意味から見て、「上京」は日本のことを言う表現であり、それを外国のことについて使うと違和感があるという意見も理解できます。
一方で、新聞では次のような用例も見られます。
ダルタニアンはフランス国王の銃士隊に入隊するのを夢見てパリに上京。
(2017年5月7日・朝日新聞)
物語のあらすじを述べるような部分で、外国の話で地方から首都に行くこと、地方から首都に生活の場を移すことをひと言で伝えるために「上京」が使われています。
外国の場合、首都に行くことをひと言でいうことばがないため「首都に行く」という意味でも解釈できる「上京」が使われることもあるということでしょう。