「~てもらってもいいですか」という言い方

公開:2019年9月1日

Q
番組で、「~してもらってもいいですか」という言い方をよく耳にします。もっと自然に、「~していただけますか」などの表現のほうがよいのではないでしょうか。
A
「~てもらってもいいですか」は、最近増えつつある言い方ですが、その使用にあたっては評価が分かれる表現でもあります。乱用は避け、言いかえも工夫しましょう。

<解説>

「~てもいいですか」は、基本的には、自分がすることについて相手に許可を求める言い方ですが、「~てもらってもいいですか」は、自分がするのではなく相手にしてもらうことをお願いしている表現になっています。つまり、ご指摘のような「~てください」「~ていただけますか」などのように相手に指示や依頼をするのと同じ内容を表しているわけです。本来なら依頼の表現で伝えるべきところを、許可を求めるような言い方をしている所が「回りくどい」印象を与える表現だと言えるでしょう。

こうした表現は、1970年代ごろに使われ始め、徐々に広まりつつあるようです。実際の放送でも、以下の様な使用がありました。

  1. (1)(司会者が出演者にグラフを見るように促す場面で)
  2. 司会:グラフを見てもらってもいいですか

(2017年4月20日NHK総合テレビ『日本人のおなまえっ!』)

  1. (2)(取材する側が専門家に対して)
  2. 取材者:見せていただいてもよろしいですか

(2018年4月21日NHK総合テレビ『ためしてガッテン!』)

(1)では「見てください」、(2)では「見せてください」という表現で済むところを、それぞれ「見てもらってもいいですか」「見せていただいてもよろしいですか」(「見せてもらってもいいか」を「いただく」「よろしい」を使って敬語化した言い方)を使っています。

「~てもらってもいいですか」が広がっている理由として、「~てください」「~ていただけますか」などが、相手に直接働きかける表現なのに対して、「~てもらってもいいですか」は、相手にしてもらえるかどうかを尋ねる形にすることで、決定権を相手にゆだね、相手への配慮を表そうとしているという点があげられます。その分、より丁寧な表現して選択されているということでしょう。

放送では、回りくどい言い方を避け、なるべくすっきりとした表現をめざすことが求められますが、スタジオや中継などのフリートークでは、文脈によって、話者の立ち位置によって、このような表現も使われることはあるでしょう。上記の(1)(2)の例も特に違和感はありません。しかし、こうした表現の使用にあたっては評価が分かれるのも事実です。通常の指示や依頼ができる状況ならば、こうした回りくどい印象を与える表現よりも、わかりやすい簡潔な指示や依頼表現のほうが適切でしょう。相手が到底断れない状況の場合には、許可を求めるような言い方は、かえって無礼な印象や高圧的な印象になる場合もあります。状況に応じて、ふさわしい表現を考えるようにしましょう。

メディア研究部・放送用語 滝島雅子

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