- Q
- 「カレーがほんとに好きで、なんなら毎日食べてます」というような言い方、どうもどこかひっかかります。
- A
- このところ、「なんなら」ということばの新しい使われ方※が、急速に広まっているようです。
<解説>
公開:2019年7月1日
メディア研究部・放送用語 塩田雄大
※ この問題は、島田泰子「副詞「なんなら」の新用法」(『二松学舎大学論集』61、2018年)という論文で非常に詳しく分析されています。
このことばは、国語辞典では次のように説明されています。これは、伝統的な用法を示したものです。
なん‐なら【何なら】[副]《「なになら」の音変化》①相手が実現を希望していることを仮定する気持ちを表す。もしよければ。「-私のほうからお電話しましょう」②相手がそれを希望しないことを仮定する気持ちを表す。気に入らないなら。「ビールが-日本酒にしましょうか」
(『大辞泉(第二版)』2012年)
ここでの「なん(なに)」は、やや口にしにくいことをぼやかして示しているのではないでしょうか。具体的には、「【あなたが希望する】なら私のほうからお電話しましょう」「ビールが【お嫌い】なら日本酒にしましょうか」ということを、「なん(なに)」を用いて表現しているのではないかと思います。日本語では、相手の意向・欲求をあからさまにことばにするのが避けられることがあり、こうしたことと関連があるのかもしれません。
そしてこのような伝統的な「なんなら」は、「私のほうからお電話しましょう」「日本酒にしましょうか」のように、「相手のために何かを提案する」という文脈で使うのが、主流であるようです(すべてではありませんが)。
一方、このところ「提案」とは関係のない文脈で使われる「なんなら」が、多くなっているように見受けられます。
調査をしてみたところ、おおむね、年齢が高くなるほど「伝統的用法」のみを支持する割合が大きくなる傾向が見えてきました。
細かくてややこしい話でしたが、なんならもっとご説明しましょうか(←伝統的用法)。