「わざわざ」?

公開:2019年4月1日

Q
「きょうはわざわざお越しいただき、ありがとうございます」と言われて、もしかして来たらいけなかったのかな、と少し不安になったのですが。
A
ふつうは相手に悪気はないはずです。「わざわざ」ということばから感じられるニュアンスが変化しつつあることを、知っておいてもよいかもしれません。

<解説>

「わざわざ」には、2つの意味があります。文脈の違いなどによって、どちらか一方の意味がより前面に出てくるかが決まってくる、と言えるかもしれません。

  1. わざわざ
  2. ①期待できる以上の手間暇をかけるさま。「わざわざ忘れ物を届けてくれた」「わざわざ作らせた特注品」
  3. ②しなくてもいいことを意図的に行うさま。わざと。故意に。「わざわざ意地悪をすることはないじゃないか」

 (『明鏡国語辞典(第二版)』(2010年))

①はプラスの評価〔=期待を上回る水準の行為〕で、それに対して②はマイナスの評価〔=不必要で余計な行為〕です。ここで挙げられている用例では、そのことがはっきりと理解されます。ですが場合によっては、この「わざわざ」をプラス・マイナスのどちらの意味で使っているのか、ことばだけでは伝わりにくいときもあるかと思います。

「きょうは(わざわざ)お越しいただき、ありがとうございます」について、「わざわざ」がある言い方とない言い方とではどちらが感じがいいかを、全国調査で尋ねてみました。いろいろな選択肢を用意した中で、最も多く選ばれたのは「“…お越しいただき…”のほうが感じがいい(“…わざわざお越しいただき…”は感じが悪い)」という答えでした(37%)。そしてこの回答には年代差があって、若い人ほどこの答えを選ぶ割合が高くなっていたのです。つまり若い人は、「わざわざ…」をマイナスイメージでとらえる傾向が比較的強いのです。自分より若い人に「わざわざ…」と言う場合には、誤解されてしまわないかどうか、注意が必要かもしれません。

なお「わざわざ」は、自分の行為を表す場合に使うことは多くありません。もし使うと、少しえらそうな印象を与えてしまいます。わざわざ親切にお教えしておくのですから、くれぐれも気を付けてくださいね。

(2018年7月実施、1,203人回答[サンプル数3,982、有効回答率30.2%])

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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