「ほろほろ鳥」の読み(チョーかドリか)

公開:2019年2月1日

Q
動物名として「ほろほろ鳥」を紹介する場合、「鳥」は「チョー」と読むべきか、「ドリ」と読むべきか? また、こうした動物名を字幕で表示する場合にはカタカナかひらがなか?
A
体に白い斑点のあるアフリカ原産の鳥をいう動物名としては「ほろほろちょう」です。
 また、動物名の表記は、『NHK漢字表記辞典』(原則p.30)に次のように説明があります。
和語、漢語の動植物名、および動植物名の総称は通常、常用漢字またはひらがなで書くことができる。
 すなわち、放送で表記する場合は、「ほろほろ鳥」となります。また、学術名の場合はカタカナで表記することもできます(「ホロホロチョウ」)。

<解説>

「ほろほろ鳥」は「ほろほろちょう」「ほろほろどり」、両方の語形が使われていますが、語形によって指すものが異なります。まず、動物名としては、「ほろほろちょう」です。『三省堂世界鳥名事典』(三省堂)では、動物名として「キジ目ホロホロチョウ科」とされています。

一方、「ほろほろどり」という語形も、辞書によっては「ほろほろちょう」と同じ意味で示されています。例えば、『日本国語大辞典第2版』(小学館)は、「ほろほろちょう」の別語形として「ほろほろどり」を示しています。しかし、実際の「ほろほろどり」の使われ方を見ると「ほろほろちょう」とは指す鳥が異なる場合があるようです。

西条八十の歌「旅の夜風」(1938)には「泣いてくれるな ほろほろどりよ」とうたわれています。これについて、西条八十は自伝『あの歌この歌 唄の自叙伝より』(1948)に、うらがなしい鳴き声の鳥を「ほろほろと鳴く山鳥の声聞けば 父かとぞおもふ 母かとぞおもふ」という古歌から、「ほろほろどり」として造語し示したと書いています。西条八十が書いた「ほろほろどり」はアフリカ原産の「ほろほろちょう」ではなく、かなしげに鳴く山鳥などから想像したものであることがわかります。

このほか、佐藤義美の童謡「ほろほろどり」(1928)には「ほろほろ(どり)はうたいます 声がしてますほろほろほろほろ」とうたわれています。この童謡では「ほろほろ鳥」の鳴き声を「ほろほろ」と表現していますが、実際の「ほろほろちょう」の鳴き声はギャアギャアといったもので、「ほろほろ」という鳴き声とは違います。この童謡でうたわれる「ほろほろどり」もアフリカ原産のものではなく、空想の鳥と言えそうです。

このように「ほろほろどり」という語形を使う場合は、アフリカ原産の鳥ではなく、空想の鳥を指すことがあります。放送で鳥の名を言うのであれば、「ほろほろちょう」という語形を使ったほうが正確に伝わるでしょう。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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