くらい? ぐらい?

公開:2018年12月1日

Q
「電話【くらい】してよ」「電話【ぐらい】してよ」のどちらがよいのでしょうか。
A
どちらでもかまいません。ただし、どんなことばの下に来るかによって、ある程度区別する傾向が見られます。

<解説>

「~くらい・~ぐらい」について、『NHKことばのハンドブック 第2版』(2005年)では、次のように示しています。

「このくらい(ぐらい)の広さ」「10歳くらい(ぐらい)の子」などの「くらい」「ぐらい」は、どちらを使ってもよい。
以前は、次のような使い分けが行われていた。

  1. 体言には「ぐらい」が付く。
  2. 「この・その・あの・どの」には「くらい」が付く。
  3. 用言や助動詞には、普通は「ぐらい」が付くが、「くらい」が付くこともある。

『NHKことばのハンドブック 第2版』p.66

要するに結論からすると「現代では【くらい】【ぐらい】のどちらでもよい」ということで終了してしまいそうです。例えば、次の歌詞をご覧ください。

「急に来るなら 電話くらい入れてよ 素顔の私 見せるのは恥ずかしいわ」

HAPPY SUNDAY 〔歌:松田聖子 作詞:松本隆〕

「私と同じ痛みを あなたも感じてるなら 電話ぐらいくれてもいいのに」

シングル・アゲイン 〔歌:竹内まりや 作詞:竹内まりや〕

しかし、昔はどんなことばの下に来るかによって【くらい】【ぐらい】を使い分けていたわけですから、その使い分けが現在どのくらい、じゃなかったどの程度残っているのかを見ておくのも、あながち無駄なことではないと思います。

「着物【くらい・ぐらい】の値段」「その【くらい・ぐらい】の値段」の2つを見せて、それぞれどちらで言うかを尋ねるアンケートを、ウェブ上でおこなってみました。すると、回答はいろいろな選択肢に分散しているのですが、その中でいちばん多かった回答は、「着物【ぐらい】」「その【くらい】」というもの(32%)でした。つまり、さきほどの『NHKことばのハンドブック 第2版』に記されていた〔体言(=名詞)には【ぐらい】〕〔「この・その・あの・どの」には【くらい】〕という過去の使い分けの傾向は、実は現代でもある程度生きているということが確認できるのです。

またこの傾向には、わずかですが地域差も見られます。「着物【ぐらい】」「その【くらい】」という回答の占める割合が、西日本ではさらに大きいのです(東日本[東海含む]:30%(328人中99人) vs. 西日本:36%(185人中67人)、小学生時の在住地別[海外在住者除く])。

え? 長々と説明している割には参考にならないですか。オー、アイ・ワナ・クライ!

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2016年1月~2月実施、517人回答)

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

※NHKサイトを離れます