「ほぼほぼ」って使っていい?

公開:2018年11月1日

Q
「ほぼほぼ完成している」などのように、最近「ほぼほぼ」という言い方をよく耳にするが、日本語として使っていいことばだろうか?
A
「ほぼほぼ」は、「ほぼ」を強調した言い方で、数量や程度が極めて完全に近い様子を表すと考えられます。ただ、言い切りたくないときの婉曲表現として用いられる場合もあるようです。また、「この表現を聞いたことがあるか」や「使うかどうか」には、年代差があるという調査結果もあります。放送のことばとしては、カジュアルな演出の番組でゲストが使うのは問題ありませんが、ニュースや報道番組では使わないほうがよいでしょう。

<解説>

  • 「夏休みの宿題は、ほぼほぼ終わっている。」
  • (予定を聞かれて)「その日は、ほぼほぼOKです。」
  • (何かの場所を探している中で)「ほぼほぼ、この辺なんだけどな。」

など、最近、副詞の「ほぼ」を2つつなげた「ほぼほぼ」を使う人が増えているようです。

「ほぼほぼ」について、まだほとんどの国語辞書は触れていませんが、『三省堂国語辞典第七版』には、「ほぼ」の項目に以下の様に書かれています。

ほぼ 数量や程度が、完全に近いようす。(途中省略)俗に、重ねて使う。「~~完売」。」

また、インターネット上の辞書『実用日本語表現辞典』では、以下のように解説されています。

「「ほぼ」を重ねて強調した言い方。完全とは言えないまでも、おおむねその通りであると述べる際に用いられる表現。」

こうした解説を見ると、「ほぼほぼ」の意味するところは、おおよそ「ほぼ」と同等か「ほぼ」を強調して、より100%に近づいたことを表すものだと言えそうです。しかし、場面によっては、微妙にニュアンスが違うこともよく指摘されます。NHKのニュースを調べてみると、地の文での使用はありませんでしたが、だれかの発言を「 」でそのまま伝える場面で、以下のような使用例がありました。

a) 「大相撲の横綱・稀勢の里が左腕などにけがを負った先場所のあと、初めて、土俵で相撲を取る稽古を行い、「ほぼほぼ問題ない」と、けがの回復ぶりについて手応えを話しました。」

(2017年5月2日 ニュース7)

b) 「…野田大臣は「総務省の担当者が、それぞれの省に問い合わせたところ、ほぼほぼ、どの省でも同じような実態だということだ」と述べ・・・」

(2018年8月20日 ニュース)

a)もb)も、「ほぼ」と同じような意味で使っていると考えられますが、「より確実だと言いたいのか」、「断定を避けて婉曲に言っているのか」といった真意は、文面からははっきりとはわかりません。『「ほぼほぼ」「いまいま」!?』(2016光文社新書)の著書である野口恵子さんは、「ほぼほぼ」について、「本当の意味が私にはわからない。これは、強調なのだろうか、それとも婉曲表現なのだろうか」と述べています。「ほぼほぼ」は、使う人によって、また、聞く人によって、常に若干のニュアンスのゆれが生じる語であると言えるでしょう。

では、「ほぼほぼ」はどのくらいの人が使っているのでしょうか。文化庁の最新の世論調査(平成29年度『国語に関する世論調査』)で、「ほぼほぼ完成している」と言う方について聞いたところ、「使うことがある」は27.3%で、10~20代では5~6割に上った一方、「聞いたことがない」が31%(60代42.5%、70代59.3%)、「聞いたことはあるが使うことはない」は41.2%でした。若い世代を中心によく使われ、高年層では聞いたことが無いという人が多い結果になりました。「「ほぼほぼ」を使うときには、伝える相手によっては、「意味が伝わらない」「耳慣れないことばを話している違和感を持たれる」などのリスクがあることに留意したほうがよさそうです。

「ほぼほぼ」は、2016年の「新語大賞」(三省堂)にも選ばれました。「ほぼほぼ」が一過性の「はやり言葉」で終わるのか、微妙なニュアンスを伝える表現として定着していくのか、これからも目が離せないことばであることは、“ほぼほぼ”間違いないでしょう!?放送では、あいまいさや違和感につながらないように注意したいことばだと言えそうです。

メディア研究部・放送用語 滝島雅子

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