外国国名の略字(「露」か「ロ」か)

公開:2018年6月1日

Q
放送で外国の国名を略して漢字1字で示したい。例えば「ロシア」は「露」としていいだろうか。そのほか、どういう国名が漢字で略記できるのか決まりはあるだろうか。
A
放送では字幕で、「米」「英」「仏」「独」「豪」と略記することがあります。また、「ロシア」「カナダ」の略記は、漢字ではなく「ロ」「カ」とカタカナ1字で書くようにしています。どういう国を漢字1字で略記できるのか、という決まりはありません。視聴者が理解できるかどうかを考えたうえで、判断してください。

<解説>

現代では、外国地名(一部の国や地域を除く)は、カタカナで書くことが当然のようになっていますが、大正の終わりごろまでは、新聞や雑誌で外国地名を漢字で書くことが少なくありませんでした。また、昭和に入ってからも、新聞では外国地名を漢字で書くことがありました。

現代でも、略記という形でかつて使われた国名の漢字表記の名残が見られます。例えば、以下のような国々です。

  1. アメリカ⇒米、イギリス⇒英、ドイツ⇒独、フランス⇒仏、イタリア⇒伊、オーストラリア⇒豪、インド⇒印

これらの国々は、いずれも現代の放送、新聞で略記されることがあります。ニュースで使われる頻度が高いため、字幕でも数多く使われます。それぞれの略記がどの国のことを指すのかが多くの人々に理解されていると想像できること、また、カタカナで書くよりも、漢字1字で書くことで字幕の文字数が減り、字幕を読みやすくすることができること、などの理由から慣用的に略記されていると考えられます。

今回の質問にある「ロシア」は、「日露戦争」など帝政ロシアのことを言う場合には「露」が使われますが、現代の国名の場合は、NHKではカタカナの「ロ」に略しています。これは、帝政ロシアとの違いをはっきりさせるという意味もあります。

このほかにも歴史的に漢字略記が使われており、現代でも組織・団体名などとして漢字が使われる国名があります。例えば以下のような国々です。

  1. ブラジル⇒伯、ポルトガル⇒葡、オランダ⇒蘭、スペイン⇒西、フィリピン⇒比、オーストリア⇒墺

いずれも日本と古くから関係のある国々で、以前は、漢字表記や漢字略記が定着していた国名ですが、現代の放送、新聞では、原則として漢字略記を使っていません。これらの国は、現代では漢字略記されることが一般的とは言えず、漢字略記の理解度も高いとは言えません。また、略記される国々と比べると、ニュースで使われる頻度もさほど高くなく、わざわざ略記する必要もないでしょう。

外国国名の漢字略記については、はっきりとした決まりはありませんが、いずれも現代日本で、慣用的にどう書かれているか、またその表記で理解できるのかを考えて、その場その場で適切な表記を選ぶようにしてください。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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