「2大会ぶり」?

公開:2017年8月1日

Q
オリンピックの放送で「日本は2大会ぶりに金メダルを獲得しました」と言ったら、その前に金メダルを取ったのは、何年前になるのでしょうか。
A
2大会前、つまり8年前ということになります。しかし、その前の2大会では取れなかった、つまり前回取ったのは3大会前〔=12年前〕なのだと考える人も、少なくありません。

<解説>

まず、「○年ぶり」という言い方をする場合には、「引き算で計算する」のが基本です。たとえばある出来事が2004年にあって、同じ出来事が2017年にふたたびあった場合には、〔2017-2004=13〕ですから、「13年ぶりの出来事」ということになります。人の年齢を「満」で数えるのと同じ計算方法です。

これに従えば、「(オリンピックでの)2大会ぶり」というのは「8年ぶり」と同じことですから、2016年(リオデジャネイロオリンピック)の時点での発言だとしたら、〔2016-X=8 X=2008〕で、前回金メダルを取ったのは2008年(北京オリンピック)だということになります。

ところが、この考え方にはどうも年代差があるようなのです。ウェブ上でおこなったアンケートで20代の回答者について見てみたところ、セオリーどおりの2008年(北京オリンピック、8年前)だという答えは6割程度で、2004年(アテネオリンピック、12年前)だと考える人も3割程度いました。これは、アテネで金メダルを取り、そのあと北京とロンドン〔=つまり「2大会」〕では取れず、そしてリオデジャネイロで取った、という解釈です。

誤解を避けるためには、「前回は北京オリンピックで金メダルを取りましたがロンドンでは取れず、2大会ぶりの金メダルです」といったような前置きがあったほうがよいでしょう。

なお、この「2大会ぶり」だけではなく、毎年おこなわれる高校野球などでの「2年ぶり」という表現についても、年代による受け止め方の違いがあることが、かつて実施したアンケートからわかっています。2009年の時点で「2年ぶり」と言った場合、基本的な解釈としては「前回は2007年」ということになるのですが、20代ではこの回答が7割程度で、「2006年」という答えも3割程度になっていたのです。聞いた人が誤解したりしないか、常に意識しましょう。まじめなまま話を終えられたのは、久しぶりです。

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2017年2月~3月実施、641人回答) (NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2009年1月~2月実施、837人回答)

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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