「年の瀬」はいつぐらい?

公開:2016年12月1日

Q
「年の瀬」は、いつぐらいから使えるのでしょうか?
A
明確にいつぐらい、とは言えません。しかし、12月に入ったばかりの時期に使うと、「年の瀬」というには早いと感じられる場合も多いようです。12月の初め、上旬の場合は、「年の瀬」を使わず、「早くも師走」「12月に入り」などほかの言い方を工夫したほうがいいかもしれません。

<解説>

国語辞典では「年の瀬」の意味を「年の暮れ」「年末」「歳末」と説明するものが多くあります。「年の暮れ」「年末」「歳末」は、1年の終わりのことを言いますが、いずれも、いつからいつまでを指す、とは言いにくいことばです。

ただし、次のように、やや日にちを限定して示すものもあります。

『日本大歳時記』(講談社・1983)では、「年の暮れ」について

12月になってからを言うが、また12月も押しつまってからをも言う。また、13日に正月の準備にかかる地方は全国的に多く、その頃から年の暮の実感が生まれてくる。たんに暮とも言う。(原文ママ)
と、時期を限定して説明しています。

また、国語辞典の中には「年の瀬」の意味を詳しく書いているものもあり、それを見ると「年の瀬」が具体的にどのぐらいの時期を指すのかがわかってきます。例えば、『新明解国語辞典第7版』(三省堂・2012)では

(それをうまく越せるかどうかが問題である)清算期としての年末
と説明しています。

江戸時代は、商品を買う場合に代金を後払いにする「掛け売り」が多く行われていました。「掛け売り」の支払いは、盆と暮れにまとめて払うことが多かったようです。『新明解』は「年の瀬」を、「掛け売り」の支払いをちゃんと清算して、無事に年を越せるかどうかが問題になる「年末」のことだと説明しています。

『岩波国語辞典第7版新版』(岩波・2011)には、
あわただしい年の暮れ(年越しをするのを川の瀬に見立てて言う)
と説明されています。

こうした辞書の説明などから考えると、「年の瀬」は「年越し」の時期を限定して使う場合もあり、12月の終わりに近い時期に使ったほうが、違和感がない、と言えそうです。

このほか、年末によく使われることばに、「押し迫る」「押し詰まる」があります。どちらも「近くなる」という意味合いです。辞書によりますが、次のような意味の違いがあるようです。

「押し迫る」は「間近に迫ってくる」という意味です。「年の瀬も押し迫る」など、「年の瀬の時期(年末の最後の数日間)が間近に迫ってくる」という意味で使われます。

一方、「押し詰まる」は、「年の暮れが近づく」という意味で、「ことしも押し詰まる」などと使われます。この場合は「年の暮れが近づいてゆとりがなくなってきた」というような意味になります。

「年の瀬も押し迫る」という使われ方から考えても、「年の瀬」は年末の最後の時期に使ったほうがしっくりくると言えそうです。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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