「スマートホン」か「スマートフォン」か ことば 放送現場の疑問・視聴者の疑問 公開:2016年10月1日 Q カタカナ表記する場合、「スマートホン」でしょうか、「スマートフォン」でしょうか。省略する場合はどう表記すればよいですか。 A 一般的な発音・表記から、「スマートフォン」、「スマホ」です。 <解説> 原音[fæ][fi][fe][fo]が含まれる外来語の場合、発音と表記を一致させることを前提に、NHKでは次のようにしています。 ①原則として、「ファ・フィ・フェ・フォ」と発音し、表記する。 なお、「ファ・フィ・フェ・フォ」の発音は、原音のような歯と唇を使った発音ではなく、両唇を使った日本語としての発音で差し支えない。 ②慣用により[ハ・ヒ・ヘ・ホ]と発音することが一般的と考えられる語は、「ハ・ヒ・ヘ・ホ」と書く。 *『NHKことばのハンドブック第2版』(NHK出版・平17(最新版は14刷))の記述内容をまとめなおしたもの 質問にある「smartphone」は、①のとおり「スマートフォン」と発音・表記します。新しく使われるようになった語であり、②のように「慣用が定着している」とは言えません。携帯電話会社の広告や、一般の人たちの発音・表記でも、「スマートフォン」が多く使われています。 一方、「telephone」「earphone」「interphone」「headphone」などは、「ホン」で発音・表記することにしています。これは②の原則によるものです。 先に示した①②の外来語の発音・表記の原則は、国の「外来語の表記」(平3.6.28・内閣訓令・告示)をもとにしていますが、それ以前、昭和29(1954)年に報告された「外来語の表記」では次にように「ハ・ヒ・ヘ・ホ」を基本にしていました。 原音における特殊な発音の書き表し方 [ファ・フィ・フェ・フォ][ヴァ・ヴィ・ヴェ・ヴォ] ・・・なるべく「ハ・ヒ・ヘ・ホ」「バ・ビ・ベ・ボ」と書く。 プラットホーム、バイオリン ただし、原音の意識がなお残っているものは、「ファ・フィ・フェ・フォ」「ヴァ・ヴィ・ヴェ・ヴォ」と書いてもよい。 *『日本語の表記』(昭54・角川小辞典29)参照 現代日本語の漢語・和語(オノマトペや方言を除く)には、「ファ・フィ・フェ・フォ」が含まれる語はありません。そのため、原音[fæ][fi][fe][fo]が外来語として日本に入ってきた当初は、「ハ・ヒ・ヘ・ホ」や「フア・フイ・フエ・フオ」(2拍で発音するもの)といった発音・表記が使われました。 さて、略語についてです。 「スマートフォン」であれば「スマフォ」または「スマフォン」になるのではないか、という意見もありそうです。実際に、スマートフォンが使われ始めたころには、「スマフォ」「スマフォン」という発音・表記が使われたこともありましたが、発音のしにくさなどから、こうした発音・表記は定着しませんでした。国語辞典を見ると、「~フォ」で終わる語はほとんどありません。また、「スマフォン」と同じ「2拍+フォン」は、「テレフォン」「サイフォン」などいくつか考えられますが、いずれも「テレホン」「サイホン」と「ゆれ」が生じている語ばかりです。頻繁に使われる語であるため、「スマフォ」「スマフォン」よりも発音がしやすい「スマホ」で定着したということではないでしょうか。 また、略語の場合、4拍に縮まることが多そうです(パソコン、コンビニなど)。なぜ、この語が「スマホン」ではなく「スマホ」で定着したのか、その理由は、はっきりしません。しかし、「メールアドレス」が「メルアド」のほか「メアド」とも言われたり、「ステルスマーケティング」が「ステマ」になったり、「ボーカロイド」が「ボカロ」になったりと、新しい語の省略語は、3拍のものも多そうで、決して珍しい形というわけではありません。 メディア研究部・放送用語 山下洋子 ※NHKサイトを離れます
原音[fæ][fi][fe][fo]が含まれる外来語の場合、発音と表記を一致させることを前提に、NHKでは次のようにしています。
なお、「ファ・フィ・フェ・フォ」の発音は、原音のような歯と唇を使った発音ではなく、両唇を使った日本語としての発音で差し支えない。
*『NHKことばのハンドブック第2版』(NHK出版・平17(最新版は14刷))の記述内容をまとめなおしたもの
質問にある「smartphone」は、①のとおり「スマートフォン」と発音・表記します。新しく使われるようになった語であり、②のように「慣用が定着している」とは言えません。携帯電話会社の広告や、一般の人たちの発音・表記でも、「スマートフォン」が多く使われています。
一方、「telephone」「earphone」「interphone」「headphone」などは、「ホン」で発音・表記することにしています。これは②の原則によるものです。
先に示した①②の外来語の発音・表記の原則は、国の「外来語の表記」(平3.6.28・内閣訓令・告示)をもとにしていますが、それ以前、昭和29(1954)年に報告された「外来語の表記」では次にように「ハ・ヒ・ヘ・ホ」を基本にしていました。
・・・なるべく「ハ・ヒ・ヘ・ホ」「バ・ビ・ベ・ボ」と書く。
プラットホーム、バイオリン
ただし、原音の意識がなお残っているものは、「ファ・フィ・フェ・フォ」「ヴァ・ヴィ・ヴェ・ヴォ」と書いてもよい。
*『日本語の表記』(昭54・角川小辞典29)参照
現代日本語の漢語・和語(オノマトペや方言を除く)には、「ファ・フィ・フェ・フォ」が含まれる語はありません。そのため、原音[fæ][fi][fe][fo]が外来語として日本に入ってきた当初は、「ハ・ヒ・ヘ・ホ」や「フア・フイ・フエ・フオ」(2拍で発音するもの)といった発音・表記が使われました。
さて、略語についてです。
「スマートフォン」であれば「スマフォ」または「スマフォン」になるのではないか、という意見もありそうです。実際に、スマートフォンが使われ始めたころには、「スマフォ」「スマフォン」という発音・表記が使われたこともありましたが、発音のしにくさなどから、こうした発音・表記は定着しませんでした。国語辞典を見ると、「~フォ」で終わる語はほとんどありません。また、「スマフォン」と同じ「2拍+フォン」は、「テレフォン」「サイフォン」などいくつか考えられますが、いずれも「テレホン」「サイホン」と「ゆれ」が生じている語ばかりです。頻繁に使われる語であるため、「スマフォ」「スマフォン」よりも発音がしやすい「スマホ」で定着したということではないでしょうか。
また、略語の場合、4拍に縮まることが多そうです(パソコン、コンビニなど)。なぜ、この語が「スマホン」ではなく「スマホ」で定着したのか、その理由は、はっきりしません。しかし、「メールアドレス」が「メルアド」のほか「メアド」とも言われたり、「ステルスマーケティング」が「ステマ」になったり、「ボーカロイド」が「ボカロ」になったりと、新しい語の省略語は、3拍のものも多そうで、決して珍しい形というわけではありません。