「豚カツ」? 「とんかつ」? 「トンカツ」?

公開:2015年10月1日

Q
「とんかつ」は、「豚カツ」と書けばいいのでしょうか。
A
この食べものは、日本語の書き方の習慣としては例外的に、「とんかつ」または「トンカツ」とすることが多いようです。

<解説>

ひらがな・カタカナ・漢字の使い方に関して、次のような習慣があります。

和語(やまとことば) :ひらがな、または漢字で書く
漢語(音読みのことば):漢字で書く
外来語(カタカナ語) :カタカナで書く

これはあくまで「ゆるやかな習慣」で、たとえば漢語であっても、国が定めた「常用漢字表」にないような難しい漢字の場合にはひらがなで書くこともありますし、また外来語であっても、たとえば「スニーカーぶるーす」や「はっぴいえんど」などのように、普通の書き方とはひと味違った印象を与えるために臨時的にひらがなで書かれることもあります。

また、個別の単語で、このような全体的習慣とは別の書き方が定着しているものもあります。「とんかつ・トンカツ」が、この例にあたります。「とんかつ」の「とん」は漢語「豚(とん)」、「かつ」は外来語「カツ(もともとは英語cutlet)」ですから、「豚カツ」という書き方になりそうなものです。

しかしウェブ上でアンケートをしてみたところ、「豚カツ」という書き方はあまりなじみのないものであることがわかりました。「とんかつ・トンカツ・とんカツ・トンかつ・豚かつ・豚カツ」という選択肢を示した上で、この中から自分で使うことのある書き方をいくつでも答えてください、と尋ねた結果、「とんかつ(80%)」と「トンカツ(78%)」は多くの人が選んだのですが、「豚カツ」は33%にすぎませんでした。つまり、これは例外的に、「とんかつ」または「トンカツ」という書き方が定着していると言えます。

なお、それほど大きな数値の差ではないのですが、東日本では「とんかつ」の回答が最も多かったのに対して、西日本では「トンカツ」がトップでした。また、これとは別の調査(2015年7月)で、「キャベツ」をひらがなで「きゃべつ」とも書くという人は関東に多いといった結果も出ています。もしかすると、「外来語を、あえてひらがなで書く」ことは、東日本(または関東)で特に好まれているものなのかもしれません。

ぼくなどは、「トンカツ」だとソースが合いそうだけど、「とんかつ」にはしょうゆをかけたくなってきます。で、カリッと揚がってるのが「トンカツ」でさ、… 長くなりそうなので、このへんでやめておきます。

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2010年3月~4月実施)

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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