『日本語発音アクセント辞典』

~改訂の系譜と音韻構造の考察~

公開:1999年1月30日

NHKが刊行している『日本語発音アクセント辞典』は,大戦中の昭和18年(1943)に第1回の編さんと刊行が行われ,以後平成10年(1998)までに5回出版している。この辞典は,放送で使うことばのアクセントを広く集録し,アナウンサーをはじめ,放送現場で使用されているほか,共通語のアクセントの専門辞書としては,他になく,共通語の標準的なアクセント辞典として朗読奉仕,演劇などの分野でも広く利用されている。
しかし,その歴史を見ると,テレビ放送開始までの時期は,いわゆる「標準語」普及の社会的要求が強く,放送のことばも「標準語の体現」として規範性を強く求められていた。その後,共通語政策のもと「標準語」から「共通語」へと表現は変わったものの,「正しいアクセント」を共通語の中に求める動きがあった。これとは別に,テレビ放送開始により「共通語」が普及してきた実態から,「通用しているアクセント」の記述が必要だという大きな2つの動きが対立するようになってきた。1966年版以降は飛躍的に語数も増え,編集方針は,放送に多く見られるアクセント型を集録する方向に変化してきた。
一方で,「共通語」とは何かと言う研究や議論も活発ではあるが,共通語が持つ特長は何か,実態は何かについては,様々な幅でとらえることしかできないのが現状である。
これまで言われてきた「東京山手の中流の上品な言葉」は全国で使われることばの基盤になりうるかも危うくなっている。変化するアクセント,ことば使いをどのようにとらえるか難しい状況に差しかかってきている。
一般の人も頻繁に登場する,いきいきとした表現へとメディアで使われることばも変化している。
これまでのアクセント辞典編集の系譜をたどり,今回の改訂の立場を明らかにし,今後の改訂への参考とする。
また,今回改訂では,本格的にコンピューターを活用したため,その資料を研究でも活用することができた。1998年から99年にかけ『放送研究と調査』に掲載した品詞別の研究のほか,音韻構造から考察を進め,特殊拍の位置によるアクセント傾向をつかむことができた。
音韻構造,語構成,複合のあり方により,大きなアクセント変化の方向を把握することができれば,共通語論議と合わせ,将来の改訂の大きな手がかりとなる可能性がある。

放送研究部 最上勝也/坂本充/塩田雄大/大西勝也

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