国家による外来語規制

~「フランス語の使用に関する1994年8月4日法律」の成立にみる~

公開:1995年1月30日

現在の日本語の問題に,外来語の多用・乱用があげられることは多い。同様に英米系の外来語が大量に流入しているフランスでは, 1994年 8月に「フランス語の使用に関する法律(通称:トゥーボン法)」が成立した。この法律は, 公共性の高い分野にフランス語の使用を広く義務づけるとともに,外来語の使用を規制しようとした点に特徴がある。違反に対する罰金が高額であることも話題をよんだ。
法案の段階では,外来語を避け,かわりに国が定めたフランス語の言いかえ,いわゆる「公式用語」の使用が義務づけられていたが,最終的には表現の自由に反するという理由で,大部分が削除された。しかし,立案意図や,成立過程における議論の数々は多くの問題を提起した。
今回の法律の背景には,フランスにおける長い言語政策の歴史やフランス語擁護に熱心な国民性というものも無視できないが,それだけではなく,昨今の国際化,高度情報化が進む世界情勢の中で,英語による言語の画一化に脅威を感じ,フランス語の国際語としての地位を危ぶむ声さえある。そういった強烈な危機感が根底にあるようだ。
義務づけが検討された「公式用語」は, 十数年前から,政府の委員会により作成されたもので,今回それらをまとめた辞典も発行された。ただ,多くは一般に普及しているとはいいがたく,人工的に外来語の言いかえを定めることの難しさを感じさせる。
外来語の氾濫はマスコミ,そして学校教育に責任があるという意見もある。そのマスコミ,とくに放送においては, CSAという独立した監視組織が,公共・民間の放送局に番組や広告の中で外来語の使用を極力おさえ,フランス語に言いかえることを指示する勧告を行っている。
今回の法律に対する国民の反応は世論調査によると,外来語の規制を支持する声も多いが,一方で若者を中心に,外来語に「現代的」「実用的」という魅力を感じ,抵抗感が少なくなっているのも事実のようだ。
一方,日本では,外来語の理解度や抵抗感に大きな年齢差がみられ,コミュニケーションギャップを生み出す可能性もある。“ことばは国が口を出す問題ではない”という意識が根強い日本人にフランス流の言語政策はなじまない点が多いが,日本の外来語の現状を深刻に受け止め,公共性の高い情報に対しては規準や目安を示すなど,“野放し状態”といわれる現状に対して,対策を考えていく必要もあるのではないか。

放送研究部 加治木美奈子/岩谷朝世
解説委員室 柏倉康夫
文化庁文化部国語課 浅松絢子

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