平成の放送制度改革を振り返る(2)

~番組規律をめぐる議論~

公開:2023年2月1日

平成の放送制度改革について、前回は法体系の再編などについて検討したが、今回は番組規律に焦点を当てて議論を振り返る。
前回検討したように、法体系の再編や放送事業の構造に関する規制の見直しでは、2000年前後からIT戦略本部など従来とは異なる行為主体が議論に参入し、法体系を全面的に見直す新たなアイデアが浮上した。一方、番組規律の検討はこうした流れとは切り離されて議論がなされた。そして、制度改正も、放送・通信融合への対応というよりも、番組をめぐる個別の問題が発端になることが多かった。
例えば、1997年放送法改正でなされた番組審議機関の機能強化では、それに先立って起きた番組をめぐるさまざまな問題が存在していた。また、2010年の放送関連法の再編に際しては、放送番組の種別の公表義務づけを含む規制強化がなされたが、これもその直前の通販番組批判を契機にしていた。
このように平成期の放送制度の見直しは、マスメディア集中排除原則など放送事業の構造に関する規制の検討と、番組に関連した規律の検討とは別の文脈で行われることが多かった。放送事業に対する構造的な規制も、最終的には多元性・多様性・地域性の確保を通じて番組の内容に影響を与えるものであり、目的の達成のためには、番組規律とあわせて検討することが合理的と考えられる。しかし、両者を包括的に検討する取り組みは十分にはなされてこなかったと言える。
放送制度は、令和に入ってからも見直しが続いている。そこでは、近年の情報空間の変容を踏まえた上で、放送政策の目標を改めて確認し、制度のあり方を総合的に検討していくことが求められる状況となっている。

メディア研究部 村上聖一

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