平成の放送制度改革を振り返る(1)

~放送・通信融合と法体系見直し~

公開:2023年1月1日

平成(1989~2019年)の約30年間、放送と通信の融合が進展していく中で、放送制度は断続的に見直しがなされてきた。本稿では制度改革を、①法体系の再編や放送事業の構造に関する規制の見直しと、②番組規律に関連した制度の見直しに分け、2回にわたって改正過程の検証を行う。
今回取り上げる法体系や放送事業の構造に関する規制は、平成に入る直前に放送法が大きく改正されたことから、1990年代はそれを基礎とした検討が行われ、抜本改革の議論には至らなかった。この時期、放送と通信の中間領域的なサービスが登場しつつあったが、放送事業者や郵政省など従来の政策共同体が主導する形での漸進的な制度改正が続いた。
しかし、2000年代に入り、官邸主導の政策形成が進む中、情報通信分野でも規制改革と連動した制度見直しがテーマとなった。そこでは、IT戦略本部などが議論を主導し、従来の業種別の縦割りの法体系からレイヤー型の法体系に転換すべきといった改革案が示された。ただ、これに対しては、放送事業者が慎重な姿勢を示したこともあり、総務省の有識者会議での検討が進む中で方向性は変化していった。そして、2010年に法体系は再編されたものの、既存の放送事業者の経営に大きな影響を及ぼさないものとなった。その後、2010年代に行われた法改正も、既存の制度の部分的な手直しにとどまった面がある。
このように平成期においては、2000年代以降、規制改革を主張する新たな行為主体が議論に参入し、制度の抜本改革が提唱された。一方で、制度を具体化していく段階で従来の政策共同体が影響力を行使し、改正が漸進的なものに回帰していった面がある。

メディア研究部 村上聖一

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