【勉強会採録】

戦争体験画が持つ力

~識者が見る「絵」の力と「場」の力~

公開:2022年2月1日

NHKでは2021年8月、NHKのローカル局が集めてきた戦争体験画の理解を深めるためのオンライン勉強会を職員向けに実施した。登壇した3人の識者の主な発表内容を本稿で報告する。▼歴史学が専門の専修大学文学部の田中禎昭氏は、資料館の学芸員として東京空襲の体験画を収集した経験から、体験画は、ステロタイプなイメージを壊す力や、ことばにできない記憶が現れる特徴があることを挙げた。また、完成作品の表現が下絵から変化していることから「絵画を通じて体験を知る」重要性を指摘した。▼京都芸術大学文明哲学研究所の齋藤亜矢氏は、ヒトの絵の認知のしかたを説明したうえで、戦争体験画は、そこに付されることばでイメージや時空間を共有できる力を持つことや、鑑賞者の想像の補完によってリアリティーや無力感が生まれること、描くプロセス自体にも死者や自分と向き合う時間の流れがあることなどを指摘した。▼地域の文化活動の支援をしているニッセイ基礎研究所の大澤寅雄氏は、戦争体験画は、その中に含まれる「場所」が人々の「記憶」をつないでいること、「大きな歴史」が覆い隠す「小さな記憶」がそこにあること、「みんな」ではなく「一人ひとり」の個別の記憶が描かれていることなどを挙げ、それらを扱うことはローカルの公共放送の役割だと述べた。これらの発表内容を受けて筆者は「小さな記憶」や「『場』と『記憶』」とマスメディアの関係などについて考察を加えた。

メディア研究部 井上裕之

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