電波三法 成立直前に盛り込まれた規制強化

~番組準則,電波法76条の修正過程の検証~

公開:2020年7月1日

政治的公平などを定めた放送法の番組準則に違反した場合に、電波停止処分(電波法76条)が可能かという問題をめぐっては、さまざまな見解が存在する。これに関連した規定は、1950年4月の電波三法(電波法・放送法・電波監理委員会設置法)の成立直前に盛り込まれたものだが、従来の研究ではその修正過程が十分に明らかにされてこなかったことから、一次資料を基に検証を行った。
当時の文書によると、まず、電波法76条の対象として放送法違反を含める修正は、電波庁と衆議院法制局を中心に1950年2月中旬の時点で検討されたもので、修正は電波法・放送法の整合性を図るためのものだったと見られる。一方、番組準則の修正はこれとは別に、その後の国会内での議論で盛り込まれた。このうち、番組準則の民放への適用は民放開設関係者が求め、番組準則の内容変更は与党の国会議員を中心に主張されていた。
これらを盛り込んだ修正案は1950年3月にGHQに示されたが、GHQがこだわったのは、番組準則などの問題ではなく、規制監督機関である電波監理委員会の独立性確保だった。GHQが早期の法案成立を目指したこともあり、番組準則や電波法76条の修正はそのまま了承され、電波三法が成立した。
こうした経緯からは、電波法76条と番組準則の修正はそれぞれ別の文脈で行われたものであり、GHQもそれらの修正を番組規制に関連した重要事項とは見なしていなかったことがわかる。番組準則違反を理由にした電波停止処分が可能かという問題を考えるにあたっては、そうした立法過程も考慮に入れ、検討を行うことが必要と思われる。

メディア研究部 村上聖一

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