オーストリア,公共放送の新たな財源制度として全世帯徴収方式を採用へ

オーストリア政府は3月23日,公共放送ORF(オーストリア放送協会)の財源制度として,受信機の有無にかかわらず,すべての世帯から「ORF負担金」を徴収する新制度を導入すると発表した。

政府は,徴収額は現行の月額18.59ユーロ(約2,600円)から15ユーロ(約2,100円)程度に値下げされるとしている。また企業の事業所も,これまでどおり徴収対象となる。

現行制度の「番組料」は,テレビやラジオの所有世帯を徴収対象としており,インターネットでORFのサービスを利用しているだけの世帯は対象になっていない。この状況について,オーストリア憲法裁判所は2022年7月,不公平な負担が生じており,放送の独立を保障した憲法の規定に反すると判断し,2023年末までに制度を改正するよう求めていた。

新制度の候補としてあがったのが,ドイツとスイスが採用している,受信機の有無にかかわらず全世帯から負担金を徴収する方式だった。連立与党の1つオーストリア国民党(ÖVP)は,この方式を採用する条件として,ORFの大規模な経費削減をあげた。これを受け,ヴァイスマンORF会長は2023年2月,2026年末までの4年間で約3億2,500万ユーロ(約452億円)の経費削減計画を提示した。ÖVPはこれを認め,「ORF負担金」の導入が決まった。

削減計画には,ORF所属のウィーン放送交響楽団や,スポーツ専門チャンネルORF Sport+の廃止が含まれていたが,各方面から反対の声が相次いだため,政府は同日,これらの存続を前提とする方針を発表した。

杉内有介

※NHKサイトを離れます