オーストリア公共放送,経費削減で所属オーケストラの存続が議論に

オーストリアの公共放送ORFのヴァイスマン会長は2月20日,ORFの意思決定機関である財団評議会で大幅な経費削減計画を示した。計画には,ORF所属で,放送や演奏を通じて音楽文化の普及を担ってきたウィーン放送交響楽団(RSO)の廃止が含まれたことから,RSOをはじめ,国内外の音楽団体や関係者などから,強い反対の声が上がっている。

RSOは1969年にORF交響楽団として発足した。演奏はラジオやテレビで放送されるほか,RSOは特に新しい音楽の開拓を使命としている。ほかのオーケストラでは演奏が少ない現代音楽作品の世界初演を年に複数回行い,新曲委嘱やレコーディングも積極的に行っている。

ORFは,2023年末に期限となる現在の受信料制度から新しい制度に移行する議論の前提として,政府から経費削減を求められている。会長は,2026年までに3億ユーロ(約420億円)の削減案を示し,RSOは重要で,あらゆる手段で存続できるよう支援するが,現状の規模を維持する財政的余裕はないとした。

RSOは声明を出し,廃止に強く反対するとともに,RSO芸術監督は,APA通信の取材で,ヨーロッパ各国に放送オーケストラがあり,「音楽の国」のRSO廃止はヨーロッパ全体に致命的な影響を与えると訴えた。またウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は,RSOの現代作品への貢献を挙げ,廃止は音楽の多様性への打撃だとし,ウィーン交響楽団の芸術監督は,ほかのオーケストラが収益性を無視できない中,公共放送ゆえ集客リスクのある現代音楽にも取り組める点をふまえ存続を求めている。

小笠原晶子

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