NHKの東京五輪関連ドキュメンタリー,BPOが「重大な放送倫理違反」

東京オリンピック・パラリンピックの公式記録映画の製作チームに密着取材したNHKのドキュメンタリー番組について,BPOの放送倫理検証委員会は9月9日,「重大な放送倫理違反があった」とする“意見”を公表した。

問題になったのは,2021年12月に放送されたNHKのBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』で,公式記録映画の総監督の河瀨氏のチームに密着取材して取材・制作された。

番組では,ある男性が都内で取材されている場面で,「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕で紹介した。

ところが放送後,視聴者から疑問や批判が相次いだため調べた結果,男性がデモに参加したという確証は得られず,NHKは字幕内容が誤りだったとして,制作した大阪拠点放送局の担当者らを停職1か月などの懲戒処分にした。

番組を審議した委員会は,取材,編集,試写の各段階の問題点として,①男性にデモに参加したかどうかを確認するという取材の基本を怠った,②男性の,別のデモに関する発言を五輪反対デモの発言に“すり替え”,編集した,③放送後の視聴者の反響を予測できず,試写の際に問題を見過ごした,の3点を指摘,「重大な放送倫理違反があった」と判断した。

意見書では,今回の放送は「結果としてデモの価値をおとしめ」るなど,「単なる字幕の付け間違いという問題ではない」として,番組制作者に,デモや社会運動への理解を深め,市民の自由な表現活動を最大限尊重して番組作りをするよう求めている。

塩田幸司

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