沖縄本土復帰から50年,本土と沖縄で異なる節目の報道

沖縄が本土に復帰して5月15日で50年を迎えた。この節目の日を沖縄と本土のテレビ局はどのように報道したのか。沖縄県宜野湾市で開かれた「沖縄復帰50周年記念式典」の時間帯を中心に,当日の正午~午後4時の編成を,沖縄タイムス(沖縄県)と朝日新聞(東京版)のテレビ欄をもとに比較した。

沖縄ではNHKと琉球放送が記念式典を中継,琉球朝日放送は沖縄返還や沖縄振興計画を検証する報道特別番組,沖縄テレビは『復帰50年 未来へ』と題してTwitter連動の3時間の生放送特別番組を編成していた。一方,東京では,NHKが記念式典を中継したが,在京キー局での式典中継,関連番組はみられなかった。

沖縄経済は,この10年間のインバウンドの増加で,観光業を中心に発展したものの,県民所得は依然全国最下位,子どもの貧困も課題とされる。沖縄ジャーナリズム論に詳しい専修大学の山田健太教授は,この50年の間に,沖縄と本土の分断が深刻化していると警鐘を鳴らす。「ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに,日米安保体制の見直しが議論されているが,本土メディアにはそうした議論が沖縄が攻撃対象や戦場になる危険性と裏腹だという視点が欠けている」と指摘。そのうえで「基地経済が沖縄を支えているといった“沖縄神話”が流布され,政治対立だけでなく市民の対立も深まっている。本土のメディアはこうした誤解を解くためにファクトに基づいた報道に努める責務がある」と訴える。メディアに携わる者は,この言葉を重く受け止めなければならない。

熊谷百合子

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