ロシア国営メディア,"独自視点"の報道続く,大統領支持率は80%超

ウクライナへの「特別軍事作戦」についてロシアの国営メディアは,4月も,海外の報道を否定したり,事実を隠ぺいしたりして正当性を強調するとともに,国威発揚につなげる“独自視点”の報道に時間を割いている。

ウクライナの首都キーウ近郊のブチャではロシア軍が撤退したあとの4月4日,後ろ手に縛られたまま殺害されるなどした多くの犠牲者の存在が明らかとなった。だが,ロシア国営テレビの「第1チャンネル」は遺体が映った映像について,「車のバックミラーの映像をスロー再生すると遺体が手を挙げた」などと,“独自の分析”で「フェイクだ」と主張した。

同月14日には黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が沈没し,ウクライナ側は対艦ミサイルで攻撃したとしているが,ロシアのメディアは「火災で船体が損傷し,えい航中に沈没した」とのみ伝えた。また20日,国営VGTRKのRussia-1は夜8時のニュースで,新型ICBM「サルマト」の発射実験成功を国防相がプーチン大統領に報告するニュースをトップで取り上げ,翌21日もロシア軍が「マリウポリを完全掌握」と同じくトップで伝えるなど,国威発揚や,戦線は有利だとする“独自視点”での報道を続けている。

欧米のメディアやファクトチェック団体などは具体例を挙げ反証しているが,ロシアの独立系の世論調査機関「レバダセンター」の調査では,3月下旬のプーチン大統領の支持率は83%となった。レフ・グドゥコフ研究部長はNHKの取材に,「支持者の唯一の情報源は政権のプロパガンダを伝える国営放送だ」と指摘している。

塩﨑隆敏

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